徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。 二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。 |
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。
遙かなる時空の中で2、翡翠×幸鷹で京編です。
全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)
(遙か花街再録)
【男の勲章】
「うわっ、何だよそれ!」
「うん? これかね?」
たまたま、藤原邸を訪れたイサトは先に来ていたらしい翡翠を見つけ、声をかけようとして失敗した。
イサトが声をかける前に、その気配に気付いた翡翠が振り返ったからだ。
そしてその翡翠の、海の海賊としてはあまりに滑らかな肌に刻まれた無残な、というか妙な痣にイサトは挨拶をすっ飛ばして驚嘆の声を上げたのだ。
翡翠の首元、男らしくも絶妙な曲線を描く鎖骨の上に、見るも無残な、というかぶっちゃけ大間抜けな歯型がくっきりと浮かび上がっているのだから。
しかし、当の翡翠はイサトの驚嘆にいかにも誇らしげに、婉然と微笑んだ。
そして恍惚とも呼べる、イサトにとっては薄気味悪い表情を浮かべ、その痣に纏わるいきさつを語り始めた。
それは、昨晩のこと。
ふと思い立って翡翠は幸鷹の邸へと足を向けた。
別段、用があったわけではない、単なる思い付き。
仕事をしていれば、からかおうと思っていたし、寝ているならば押し込んでみるのも一興と。
先約を取り付けているわけではないので、邸にいないということも考えられたが、まぁ、思い立っての行動だ。
それが吉と出ようと凶と出ようとそれに至までの過程が面白ければ、五分五分だろうと、翡翠は軽い気持ちで邸の塀を乗り越えた。
そして迷う事なく幸鷹の部屋へ、御簾を潜り几帳を押し退け寝台へ。
しかし、そこには部屋の主はいなかった。
几帳の布に手をかけ、はてまだ戻っていないのかと首を傾げていると、冷ややかな声が翡翠の背にかかった。
「…何をしている」
「おや、これはこれは別当殿」
振り返れば、白い小袖に打掛を羽織った幸鷹が眉間に皺を寄せ、怪訝そうに翡翠を見下ろしていた。
どうやら、幸鷹は湯浴みをしていたらしく、いつもは少し首を動かしただけでもさらさらと揺れる髪が、今は幾筋かの束になって揺れている。
龍神の神子の働きによって、ようやく寒気を孕み始めた空気に、僅かながらほのかに湯気が立ち上っている。
その様子に翡翠はうっすらと口辺に笑みを浮かべた。
「別当殿のご機嫌を伺いに来たのだけれど…」
「それならば、たった今、地の底まで急降下しましたよ」
翡翠の言葉を、幸鷹は不機嫌さを隠そうともしない声で、切り捨てた。
だか翡翠はそれにますます機嫌を良くし、幸鷹は翡翠のその様子に眉間の皺を増やした。
しばし、無言の視線の応酬が続いたが、互いの腹のうちが全く異なるのを見越して、埒が明かぬと幸鷹は視線を逸らし、翡翠を押し退け褥へと向かった。
「暇な海賊と違って明日も早いので、私は休みます。用件なら明朝伺います」
「用件なら、今出来たよ」
二の句を次がせない勢いで皮肉混じりに言い捨てた幸鷹だったが、思いもよらぬ翡翠の返し文句に柳眉を潜めた。
「どういう…、っ?!」
翡翠の言い回しを訝しく思い、振り返った幸鷹は、翡翠に搦め捕られ、言葉を途切らせた。
翡翠は手近な柱に幸鷹を押し付け、その口唇に噛み付く。
突然のことに、幸鷹は狼狽し、振り上げた手は、た易く翡翠に封じ込められた。
息を奪うような口付けに、幸鷹の抵抗が次第に弱々しくなる。
それを見越して膝を割れば、衣越しでも解る細い肩がびくりと揺れた。
翡翠がそのまま膝で幸鷹の内股を慰撫すれば、幸鷹は痙攣のような震えを走らせ、腕は縋るように翡翠の衣を掴んでいた。
「…ふ…、…んっ」
口唇を離れ、顎や喉元に舌を這わせれば、咄嗟に口唇を噛むような曇った声が頭上から零れ落ちた。
「声を抑える必要はないよ。君の悦い声を聞かせたまえ」
衿を割って、薄い胸元を嘗めながら翡翠が囁くと、幸鷹はますます口唇を噛み締めた。
「強情な子だね」
「っあ、や…めっ」
幸鷹がそんな態度をすると始めから解っていた翡翠は、まだ何の反応も示していない幸鷹のやわらかな胸の頂に歯を立てた。
途端に、幸鷹の口唇から切羽詰まった声が溢れる。
それに気をよくした翡翠は、歯を立てたその場所を癒すように舌を這わせ、口唇で甘噛みした。
やわらかかったそこは、次第に弾力を持ち、ほんのりと色付き始める。
「や、…やめっ、ん…」
幸鷹の口からは抵抗の言葉が漏れるが、翡翠は意に解さず、さらにそこを舐り続ける。
幸鷹の繊手が伸び、翡翠の髪に絡み付く。
「…こ、の…!」
些か強すぎる力で髪を鷲掴みにされ、さすがの翡翠も痛みに顔を上げようとしたが。
「いい加減にしろっ!」
「…っ痛ぁっ!!!」
夕べのいきさつを回想を交えイサトに話していた翡翠は、そこで小さく笑った。
幸鷹に髪を引かれた翡翠は、顔を上げる前に、幸鷹に肩を掴まれ、思い切り肩口に噛み付かれたのだ。
その時の痛みを思い出すと、微笑ましくて堪らない。
その後のことを思い出せば、さらに笑みは深くなる。
「まったく、可愛いらしいものだよねぇ」
「…可愛らしいかどうかはともかく、それ晒して歩くのはマヌケなんじゃねぇ?」
イサトが奇妙なものでも見るように、翡翠に答えれば、翡翠はするりと幸鷹の歯型を撫でて、人の悪い笑みを零した。
「君はまだ子供だね。こういうのは男の勲章というものだよ」
「勲章、ねぇ…」
「背中にはもっと派手なのを施してもらったのだが、見るかね?」
「見たかねぇよっ!」
翡翠がいそいそと衣に手をかけ始めたので、イサトは飛び上がるように、翡翠から離れた。
「あれー? イサト君に翡翠さん。おはよーございます。何してるんですか?」
すると、測ったように絶妙な間合いで花梨の明るい声が飛び込んで来た。
どう翡翠から離れようかと逡巡していたイサトは、その機会を逃さず、花梨の方へと走って行った。
「ふむ。冷静温和な別当殿の激情を見せてあげようと思ったのに」
取り残された翡翠が漏らした小さなつぶやきは、聞く人もなく晴れ渡った高い秋空に吸い込まれた。
終わる。
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漫画で描いてたんだけど、1ページ描いたところでどーにも止まってしまったので文章にしてみました。
多分、漫画で描いた方が翡翠さんのおバカ加減が出る(それもどうよ?)んだろうけど、今の私には描けそうもないので。
だいぶん前から、ちびちびと携帯で打ってたんですが、ようやく終わりました。
しかし、漫画では3ページくらいのはずだったんですがねー。
何で文章にするとこんなに長くなっちゃうんだろう…。
回想のところを大幅に加筆したからかな?
…単に私に文章構成力がないからですね、ガクリ。