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徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。
二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。
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創作の小話です。
オリジナルキャラクターとのお話なのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。

遙かなる時空の中で、友雅×鷹通前提で京編でオリキャラ万歳な内容です。
全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)
【 天狗の娘 】


君は少しも悪くは、ないのにね・・・。




やれやれ、私も命運というものが尽きてしまったようだ。
気が向いて、北山までやってきたが、無闇に分け入ったのがここに住むという天狗の怒りでも買ったのか。
足を捻って動けなくなるとは。
さて、こんな森の中では、大声を出したところで誰にも伝わらないだろうし。
まぁ、森深いとはいえ、景色は綺麗だし、空気も澄んでいて清清しい。
ここで朽ち果てるというのも、悪くないかもしれないな。

ぼんやりと中空を見つめて、梢の間から差す陽に目を細めて。
そのまま目を閉じる。
さわさわと、風の通る音が心地よく、時折聞こえる鳥の声も心地よい。
都ではこんな風に自然に心を傾けることなど稀だ。
どこかしらに誰かの耳が、目が光っていて、心休まる時などほとんどない。
そう思えば、この自然に抱かれているという感覚は、本当に心休まる。

・・・心地よい。





どれくらいそうしていただろうか。
がさがさと、不自然に木立が鳴る。
獣でもやってきたのだろうかと、そちらに目をやると。
水浅葱に萌葱の重ね衣の、小さな影がそこに現れた。
どちらかといえば、あたたかな今日。
目深に衣をかぶるその隙間から。

「・・・蜘蛛の糸?」

「何じゃ、死んでおるのかと思うたぞ」

「死んではいないが、動けなくてね」

「怪我か」

古風な物言いの割りに、鈴のような声。
背丈からして十かそこらか。
依然、衣をまとったまま近づいてきたその子供の腕をつかむ。

「何をするか!」

「おや、これは」

腕を引いた折に被っていた衣が外れて、その下から雪のような髪がこぼれる。
きつい叱声に、その顔を目に収めると。
髪のように白い面と、それと対照的に赤い瞳が目に入った。

「は、離せ」

焦ったような声に、仕方なく手を離せば。
落ちてしまった衣を急いで拾い上げ、また頭から被ってしまった。

「おや、もう隠してしまうのかい? もう少し眺めていたかったのだが」

「わしとて好きでこのような姿をしておるわけではない! 陽に当たれぬ体なのだ」

「陽に、当たれない?」

「・・・おぬし、変わっておるな。わしの姿が恐ろしゅうはないのか」

「そんな愛らしい姿の小鬼を恐れていては近衛などやってはいられないのでね」

私がそういうと、小さな鬼は可愛らしい声を上げて笑った。
鬼というものに会うのはこれが初めてだが、風評のように恐ろしいとは露ほども思わない。
その辺りにいる童とどこが違うというのだろう。
まぁ、姿は大分違うようだけれど。

「・・・っ」

「少々待っておれ」

小さな手で、投げ出したままだった私の足に触れ、そう言って小さな小鬼は元の木立の中に消えた。
そのさまは、鬼というよりは野を駈ける兎のようだと思った。
話し相手がいなくなって、元の森の静寂に戻る。
体が動かせぬ以上、何もすることがなく、またぼんやりと空を眺める。
眺める空は風に揺れる葉で、一瞬も同じ姿をしていない。
だから、それを眺めるだけで、暇つぶしになった。

それから、また木立が揺れ、白い小鬼が戻ってくる。

「多少痛むだろうが、我慢せい」

そういって座り込み、私の足に何か塗っている。
ひやりとするそれは、青臭いような、そんな匂いを放っていて、何かの薬草であるのだろうと解った。
そうして、添え木と布で足を固定し、小鬼は私を見上げた。

「骨は何ともなさそうじゃから、3日もすれば良くなろう。無理に動かすでないぞ」

「すまないね。・・・だが、動かそうにも動けないから、無理はできないね」

「すぐにでも人里に送ってやりたいが、わしではお前を運べぬからな」

そうして、適当にそのあたりに腰を下ろした小鬼は、興味深そうに私を見やった。
手当てを終えても立ち去ろうとしないのは、何か聞きたいことでもあるのだろうかと、そう思って。

「小鬼殿は私の話し相手になってくれるのかな?」

「子鬼と呼ぶな。わしには譲葉(ゆずりは)という名前がある」

「ほう、良い名前だね。私は橘友雅というのだよ」

尋ねると、拗ねるような声で、名の訂正を入れられた。
だから私も名乗る。
そうして漸く、出会ってから暫く経つのに。
その上、手当てまでしてもらったのに、互いの名前をこの時まで知らなかったのだと気が付いた。

「ふぅん、橘か。一人でいてもつまらぬだろう。動けるようになるまで話し相手くらいになってやる。わしも一人で居るのはつまらんし」

「できれば、友雅と呼んではくれないかい? 姓で呼ばれるのはあまり好きじゃないんだ」

「そうか。なぁ、友雅。お前、近衛といったな。宮中に居るのか?」

「そうだよ。宮中に興味があるのかい?」

「あぁ。京ではどんな暮らしをして居るのだ?」

譲葉の質問に、そう問い返すと、矢継ぎ早にいろいろな質問を投げかけられた。
それに一つ一つ答えながら、目の前の子供の無垢さに、微笑ましさを覚える。
そして風聞はやはり当てにならないとも。
鬼は厄災や疫病をもたらす恐ろしい異形のものという。
だが、目の前で宮中の話に瞳を輝かせる、小さな雪兎は、色彩こそ人の身ではありえないけれど。
普通の子供と、何が違うというのだろう。
そして話の飲み込みの早さに、そこらの文官より余程賢いとも思った。

「見た目は華やかで優雅に見えるが、どこに人の目が光っているか解らない分、いつも肩の力が抜けないよ。障子に目あり、襖に耳ありとね」

「・・・ふぅん。京暮らしとは窮屈なものだな。わしは父様に拾われて正解だったな」

一人納得したように、腕を組んで頷く譲葉の言葉に引っ掛かりを覚える。
拾われたということはもともとこの山の生まれではないということだろう。
そして、正解、ということは。
もとは京で生まれたということだろうか。

「譲葉、君は京で生まれたのかい?」

「父様にはそう言われたぞ。どこぞの女房がこの山に置いて行ったそうだ。まぁ、わしはこんな姿だからな」

女房、ということはそれなりの家の生まれということか。
しかし、この髪と瞳の色では、家で育てられなかったのであろう。
そのことに、自分でも思い当たっているのだろう、譲葉は少し寂しげな瞳をしていた。
だが、譲葉の言を取るわけではないが、譲葉はここで育って本当に正解だとも思う。
あんな窮屈な場所では、この天真爛漫さと優しさを備えた譲葉は押しつぶされてしまいそうだから。
自然に、思うままに振る舞い、思うままに生きるには、この場所のほうが合うだろう。
しかし、この譲葉を拾い育てた父御とはいったいどんな人物なのだろうか。
鬼と恐れられる姿を持つこの子供を拾い、そして手当てなどの知識を与えた人物は。

「ねぇ、譲葉。君の父君はどんな人なのかな。余程の知識人と見えるが」

尋ねると、父を誉められて嬉しいのか、先ほどの少し寂しげな顔が、明るいそれに変わる。

「あぁ。父様は本当に何でも知って居るのだ。わしに天候の読み方や、草木の見分け方などいろいろ教えてくれた。あまり会えぬがわしは父様が好きじゃ」

「あまり会えない? 旅でもしているのかい?」

「よくは知らぬ。聞いても教えてくれぬのだ。まぁ、天狗の世界のことなど聞いてもわしには解らんだろうが」

薄々気づいてはいたが、はやり育ての親は人ではなかった。
だが、譲葉の話ぶりから、この子が父御を本当に好いていることがわかる。
そして大切にされているであろうことも。

「譲葉の父御は賢いのだな」

「うむ。わしの病のことも良く知っておった」

「病?」

「わしのこの姿は病によるものなのだそうだ」

そして譲葉は己の病のことを語った。
譲葉は生まれた時より、人より色の薄くなる病だと。
だから髪は白く、瞳は赤いのだと。
そして、色がない分、日に当たると肌が焼かれてしまうのだと。
この時、はじめて肌に色があるのは日に当たっても平気なためなものだと知った。
誰よりも弱い生き物として生まれた子供。

「父様はこの病を治す方法はないのだといっておった」

「そうか、残念だね」

「うむ。でも仕方あるまい。方法がないのだ。だが・・・」

「うん?」

「一度でいい。陽の下を、こんな衣などまとわず、思い切り歩いてみたい。そう思う」

「・・・」

叶わぬ願いを思う瞳の強さが。
それだけ、それが不可能だと物語っているように。
一瞬だけ、暗い翳りを映す。
しかしそれを覆すように、笑顔を浮かべて。

「もともと生まれが弱いだけに、わしは長く生きれぬのだそうだ。だがわしはそれを悲しいとは思わぬ」

「そうだね、君は私が見てきた今までの誰よりも生き生きしているように思うよ」

「うむ。命が短いというならば、生きられる間に好きなことをたくさんして楽しもうと思うておる」

だが、この小さな命の何と強かなことか。
己の運命を悲しみ嘆くのではなく、光に目を向けて、強く歩き出せる、輝きを秘めた息吹。

「譲葉は強いね」

「後ろ向きな考えではそれこそ命を縮めてしまいそうではないか」

「ふふ、そうだね」

勝気で、前向きなこの小さな命が。
どうか一時でも長く生きられたらと。
譲葉と話していると、そんな私らしくもない願いのようなものが生まれる。
だが、それでも。
どうか、譲葉に時間を、――と。





そうして譲葉と出会って3日ほど。
何くれと世話を焼いてくれた譲葉のおかげか、足の痛みもほぼなくなりつつあった。
添え木も外し、薬だけを塗って布を巻いて。

「腫れも引いたな」

「そうだね、痛みも引いたし、もう歩けるだろう」

「・・・そう、だな」

そういって譲葉は一瞬、寂しげな瞳をした。
その時になって、怪我が治るということは、この山を降りる、つまりは譲葉との別れだと気づいた。
あの瞳は、それを思ってのものだったのだろう。

「譲葉。山を降りても、二度と会えないというわけではないのだよ?」

「別にお前になど会えずとも寂しくなどないぞ」

「おや、誰も寂しがっているなどとは言っていないよ」

言葉尻を掬って笑いかけると、譲葉は憤慨したように、真っ赤になっていた。
それを、可愛らしいと思う。

「そう、京と北山など、すぐ目と鼻の先だよ。いつでも・・・」

「もう、ここへは来るな、友雅」

すると、きつい声で私の言葉は遮られた。
不思議に思って、譲葉の顔を覗き見ると。
悲しそうな、そんな顔で。

「わしは鬼だ。そしてお前は京の役人だ。役人が鬼と通じていてよいと思っておるのか」

「譲葉・・・?」

「わしが実際、何の力も持っていない非力な子供であっても、この姿は鬼の姿以外の何者でもない。京人が鬼と通じていればどのような処罰を受けるか、いくらわしとて知っておる。それにお前は役人だ」

「・・・」

泣き笑いのような、そんな切ない瞳をして。
必死に笑顔を取り繕いながら。

「ここであったことはすべて忘れろ。それがお前のためだ」

そういって、私の腕を取り、立ち上がらせる。
私は譲葉の言葉に、何も返せないで、されるままに立ち上がる。

「もう、歩けるのだろう。人里近くまで送ってやろう」

そうしてゆっくりと、譲葉は歩き出した。
なるべく平坦な、歩きやすい場所を選んで、譲葉は私を誘う。
その小さな心遣いに。
そして私が京へ帰ってからのことを考えての、さっきの言葉にも。
この小さな頭で、精一杯に私のためを思ってくれることに、小さな棘にでも刺されたように、胸が痛む。
結局、私は、言葉が見つからず、麓近くまでずっと黙ったままだった。
そして、譲葉も。





「ここから下ればすぐに人里に出られる」

互いに無言のまま、山をくだり。
そうして陽が傾きかけたころ、木々がまばらになるあたりに来て、譲葉は私から離れた。

「譲葉・・・」

私は、何を言おうとしたのだろうか。
決まった言葉など何もなく、だが、何か言わなければと名を呼んだ時。
その続きの言葉は、私を呼ぶ声と、悲鳴と、飛び込んできた矢によって永遠に失われてしまった。
振り返れば、狩衣姿のものが何人か目に入る。
その腕には新たな矢が番えられている。
もう一度、譲葉を見返せば、とっさに出したのであろう腕に、痛々しく、長い矢が刺さっている。
その小さな体が矢から死角になるように、立ち直し。

「友雅、わしを殺せ」

手を差し伸べようとしたところで、聞き違いだと思いたい言葉が耳を打った。
雪のような肌に、赤い血を滴らせながら。
その色と同じ瞳が、苦痛に歪みながら、笑みを浮かべた。

「お前、わしを庇おうとしておるだろう。無駄なことは止めろ」

「・・・」

「このままではお前は鬼と通じたものとされてしまうぞ」

「譲葉」

言葉を交わすわずかな間にも、足音は近づいてくる。
私が動けないでいると、譲葉は腕に刺さった矢を、力任せに抜いた。
矢尻に肉が引き攣れて、柔肌の傷を広げる。
むっとするような、血臭。
その鮮血をまとわせた矢尻が、私に牙を剥く。
近衛としての慣習ゆえか、私はとっさに剣を抜き放っていた。

「友雅、わしを斬れ」

ふわりと。
羽根が降るようなそんな笑顔が。
私の動きを完全に奪っていた。
その間に。
ぐずり、と。
刀越しにやわらかな肉を裂く感触。
目の前の小さな体が崩折れる。
呆然と、それを見下ろすしかない私の頬に、血に塗れた小さな手が添えられる。

「・・・わしは友雅に会えて、楽しかったぞ」

「・・・譲葉・・・」

「もともとわしの命は短い・・・。ならば、わしが生き残るより、お前が生き残るほうがいいだろう?」

濁りはじめた瞳が、それでも優しさを浮かべたまま、言葉を続ける。

「生まれ変わりというのがあるのなら、今度は陽の下を歩ける体で生まれたいな」

「あぁ、そうしたら、一緒に京を歩こうか」

「そうだな、またお前に出会いたいな・・・」

ごぼり、と言葉を遮って溢れた大量の血。
それが命の源であるように、急速にぬくもりを失っていく小さな体。
瞳は完全に光を失い、頬に添えられていた手もいつしか地に付いていた。

「・・・橘友雅殿。ご無事ですか」

鬼の姿に尻ごみしながら、ゆっくりと近づいてきた男がそう声をかけてくる。
その視線から譲葉を隠すように、上から衣をかける。
この小さく無垢な子供に、姿の違いというだけで罵声を浴びせかけられるのは我慢がならなかったから。

「友雅殿、先ほどの鬼は・・・」

「・・・私が始末したよ」

衣で隠した譲葉の小さな手を、その布の下で硬く握りながら。
感情のこもらない声でそう唱えた。
私の後ろでは、鬼を討ったとする賞賛の声が聞こえたが。
それはまったく耳に届かなかった。





耳に残るのは、来世に想いを馳せるかすれた声。
瞳に浮かぶのは、苦痛を必死に耐え、笑顔を浮かべようとする緋色の瞳。
初夏に出会った、季節外れの雪兎。
それは名残雪のように。
私はこの手でその名残雪を消してしまった。
ただ、常ではありえないというだけの理由で。

たった数日間、共に過ごしただけ。
それでも長年の友のようで。

どうしてそんな譲葉が死なねばならないのか。
それも誰よりも自分が、譲葉に時間をと思っていたのにもかかわらず。
ただ、私の立場を慮って。
そのために、譲葉はその名のとおりに、己の命を私に譲って死んでいった。

諸行無常という言葉があるが、これほどまでに無常なことがあるだろうか。





「ねぇ、譲葉。どうしてこの世はこんなにも理不尽なことで溢れているのだろうね。
 君ならば何と答えるのだい? 何だか今はとても、君の答えが聞きたいよ。

 ねぇ? 君は少しも悪くは、ないのにね・・・」 



END

***** あとがき。*****************************************

これは完全にオリジナルストーリー、前提なしに近いかな。時期としては多分、友雅さんが22くらいの時? かな。『紫陽花の君』に名前だけ出た『譲葉』と友雅さんのお話。
内容的に薄っぺらいというか、ありがちなお話になってしまったので、アップに迷ってしまったのですが、書いたら上げる、が基本な私なので上げちゃいました。
自己満足の塊のようなお話です、これは。でもその割りに、長いですね・・・。(滝汗)

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