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徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。
二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。
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創作の小話です。
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。

遙かなる時空の中で2、翡翠×幸鷹で伊予編です。
全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)

このお話は、翡翠さんの部下の男の子が語り部です。
コミックス6巻に出てきたスキンヘッドさんの心の古傷を抉っちゃった彼。
(この作中では勝手に勇魚くんと命名させていただいております)

【 市女笠 】


新しい国守さんがやってきて、ひと月ほど。
あの人の説く改革は、あまりに俺たちに優しすぎて逆に警戒をされている。
今まで、政策という名の暴挙に虐げられ、海に逃れたものにはなおさら。
そして、その暴挙にもあえて耐え忍んできた陸人には、寛大すぎると不興を買って。
俺はあんまり頭良くないから、難しいことは解らないけど、あの国守さんは、この状況をどう打開するつもりなんだろう。

「まったく、久方ぶりに楽しみが出来て、たまらない」

と、お頭は最近なんだか上機嫌で。
俺は、そんなお頭に一角(ハゲのやつ)と魚虎(鉢巻のやつ)と一緒に担ぎ出されて、今日は買出しに出ている。
お頭はどこに行っても目立つ。
今も市井を歩いてるだけなのに、四方八方から視線が集まっている。
集まるだけじゃなく、ことさら女の人から声をかけられているし、そんなお頭もまんざらでもないように返事をしている。
いつものことだから、俺たちもただ、お頭のマメさに感心するというか、呆れるというか。
そのうち、適当に見繕って今晩のお相手にしちゃうのかなぁ。

「おや?」

「お頭、どうしたんです?」

何人目かの熱い視線に笑顔で退散願ったお頭が、ふと視線を遠巻きにこっちを伺う人垣に放った。
視線の先には、市女笠の女が立っている。
垂衣で顔は見えなかったけど、衣越しにうっすらと見える着物から、どこかの貴族の姫だろうと察しが着いた。
あぁ、また一人、お頭の見た目に騙されて心つかまっちゃったのかと同情にも似た感想を持っていると、お頭は迷うことなくその女のほうへと歩みを進めた。
俺たちは、またお頭の悪い癖が出たのかと、ため息混じりにその後を追った。
女はお頭が真っ直ぐに自分の元へと歩いていることに気づき、うろたえたようにその場を去ろうとしたが、お頭がそれを許さなかった。
踵を返す女の腕を、有無を言わさず掴みその場にとどまらせた。
女たちの羨望とも嫉妬ともつかない声がざわめく。

「お許しを・・・、お放しください」

「ふぅん?」

俺たちがお頭に追いつくと、市女笠の下からか細い声が上がっていたが、お頭は意に介した風もなく、掴む腕の力を強めたようだった。
その、いつもならばないお頭の様子を俺たちは訝しく思った。
だけど、だからといって如何こう口出しできるわけでもなく、結局一歩引いたところでそのやり取りを見守るしかなかった。
お頭は、強引に女の腕を掴んで、街道から横道へと入っていく。
取り合えずといった感じで、お頭について路地を進み、さらに裏のほうへと差し掛かったころ、一角に止められた。

「お前、それ以上ついてくのは野暮ってもんだろ」

「え・・・?」

歩みを止めて後ろの二人を仰ぎ見ると、一角はにやにやとこっちを見ながら笑っている。
意味が解らず首をかしげていると、魚虎が俺の肩をぽんぽん叩いた。

「昼日中、強引に路地裏まで引っ張っていくってのはアレしかないだろ」

アレ、と曖昧な言葉を言われてしばらく逡巡した後、その言葉の含みを悟って顔に熱がともる。
お頭は何を考えているのか読めないところが多い人だけど、こんな唐突に、しかもはじめて会ったような女と、いきなり路地裏にしけこむなんてと言う思いが浮かび、二人とお頭の消えていったほうを交互に見ていると。

「離しなさいっ、どこまで連れて行こうというのですか」

お頭が消えていったほうから、聞きなれた怒声が聞こえてきて、俺たちは一瞬首をひねる。
顔を見合わせ、まさか、という思いとともにその現場に走り寄ると。
市女笠が地に落ちて、目にも鮮やかな着物と強い眼差しを湛えた秀麗な顔が、はっきりと見て取れた。

「こ、国守さん。そんなカッコで何やってんの?」

普段と変わりなく、一部の隙もなく着込んでいる着物なのに、彼には決して有り得ないだろう女装束で。
そんな不釣合いな姿なのに、妙に似合ってしまっていると思うのは、やはり国守さんの顔が綺麗だからなのか。
お頭に手首を掴み上げられて、袖口から肘近くまで覗いてしまっている白い腕に、妙な艶めかしさを感じながら、俺は呆然と思った疑問を口に乗せていた。

「わ、私はただ、市井の視察に・・・」

「何で女の格好なの?」

「それは、私の顔は民に知られているから、ありのままを見るには変装をと」

「はぁ、なるほど」

吊り上げられ、爪先立ちで俺の質問にまじめに答える国守さん。
何だかその姿が、身売りされる娘みたいに見えて、ちょっとかわいそうだなと思い、お頭に視線を移す。
そうして俺は、そのことに後悔する。

(見るんじゃなかった・・・)

お頭は笑っていた、それもかなり、いやらしさを含んだ顔で。
その顔が、そのままこちらに向いて、軽く顎をしゃくった。
俺たちは、顔を見合わせるでもなく、その路地から出た。
お頭のそのしぐさと視線は、言外に邪魔だといっていたからだ。

 


路地を出て、すぐの壁際に俺たちは示し合わせるでもなく背を預けた。

「まさか、あの姫さんが国守さまだとはねぇ・・・」

一角が感心したように呟く。
俺もそれに同意を示すように小さくうなずく。
いくら街のありのままを見たいからといって、ある意味、この伊予の最高権力者のような人が、供も連れず変装までして。

「でも、綺麗だったよなぁ、幸鷹様」

「うん、何か似合ってたな。本物のお姫様みたいだった。・・・って、魚虎?」

「本物の女君なら三日夜の餅持参してもいいんだけどな・・・」

「放っておけ。そいつは国守さまに惚れ込んでるんだ」

「はぁ?」

ぶつぶつ呟く魚虎を唖然と見つめていると、一角があきれたようにため息を吐いた。
惚れるって、国守さんに?
そりゃ綺麗な人だとは思うけど、あの人は男の人なのに?
そんな思いをめぐらせていると、一角が小馬鹿にしたように俺を見た。
いかにもガキといった目に対し、俺は考えを口にしなくて良かったと思った。
男は女と所帯を持つのだけが世界ではないことくらい、俺でも知識としては知っている。
だから、きっと口にしたら笑われていただろう。

「しかし、見たか、あのお頭の顔」

「・・・何か、ヤラシイ顔してたな・・・」

その俺の言葉に、一角はにやりと笑った。
その笑い方が気に食わなかったが、俺も顔をゆがめて笑った。
奇妙な沈黙が、街の喧騒をはさんで俺たちの間に漂う。
魚虎は相変わらず何やら呟いている。

(今夜のお相手は国守さん、なのかなぁ・・・)

冗談交じりにそんな下世話なことを考える。
だけど、お頭のあの笑い方、多分、俺の考えは間違っていないと思う。

さっきまで聞こえていた一方的な国守さんとお頭の諍いの声は、いつの間にか聞こえなくなっていた。


END

***** あとがき。*****************************************

久しぶりに、リハビリのつもりで書いてみたのですが、ちょっと長いなぁ。
はじめはギャグのつもりだったのですが、あれ?(汗)

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