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徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。
二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。
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創作の小話です。
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。

遙かなる時空の中で2、翡翠×幸鷹で現代編です。
全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)
【 MD 】



「何だい、これは」

「プレゼントです」

「ぷれ・・・?」

「贈り物、ですよ」

「これが、私の生まれた日の祝いの品?」

「そうです。では、私は仕事がありますので。帰りは日付が変わると思います」

「・・・」

「何か不満でも? お前の誕生日に品を送るだけでも有難く思いなさい」

「まぁ、催促したわけでもないのに、用意してくれているのだしね」

「いいですか、きちんと最後まで聞くように。最後まで。帰ったら感想を聞きますからね」

そう言って、幸鷹はカバンを抱えて出て行ってしまった。
その様子が常と違って見えたのは、少しでも自分を慰めようと思った私の健気な思いからなのか。
ため息をついて、手のひらの収まる薄い四角い箱をテーブルに置いて、私も仕事に出かけた。




こういう、一人でいたくない時に限って、仕事というものは早く引けたりして。
だからといって、他の誰かと過ごす気にもなれず、まっすぐに帰宅する。
夕食を一人で作り、もそもそと食し、私を蔑ろにした可愛い人の分にはラップをかけて。
風呂につかり、時間が早く過ぎるように、珍しく長湯したというのに。
日付を超えるにはまだあと2時間近く。
ため息をついて、ソファに腰を下ろしたところで。
テーブルの上に今朝置いたままだった彼からの贈り物を見出す。
薄い、四角い、小さなMD。

「確か、感想を聞くと言っていたね・・・」

これで、感想を述べられなければ、ただでさえ沈んだ気分が、帰宅後の可愛い人の叱咤で余計へこむだろう。
置きっ放しにしていた、バッグからウォークマンを取り出しセットして。
ヘッドフォンに耳を傾けた。

『どうやら、きちんと聞いているようですね』

流れてきたのは、愛しい可愛い人の声。
贈り物は、どうやら彼の声らしい。
それに粋な計らいと、少しだけ気分を良くして聞いていると。

『まったくお前というやつは、時間にはだらしないし、出来ることを真面目にしようともしない。髪は邪魔になるから、括るか、さもなければ切れといっているのに聞きはしないし』

次から次へと、よくもまぁ、これほど思いつくものだと感心するほど、これでもかという小言が降ってくる。
その事に、ようやく浮上してきた気分がまた降下し始める。
脱力するように、私はソファに身を預けた。
けれど、ここで聞くのをやめて、帰ってきた彼の生の小言を聞くのも面倒に思えて。
結局、MDの時間が許す80分、延々と収録された彼の小言を聞くことに。
小言耐久80分が開始された。




時計の針が、日付を越える少し前。
MDの残り時間も、あと5分を切った頃。
どうしてこれだけの長時間、同じ言葉が出てこないのか不思議になるような音の群れが、ふつりと途絶えた。
その事に、ようやく終わりが来たのかと思ったが、再生はまだ続いている。
不自然な沈黙の後。

『・・・けれど・・・』

声が、再び。
それこそ擦り切れたテープのように途切れ途切れに。

『そんな貴方でも、生まれてきてくれて、良かったと思う』

一つ一つの言葉の合間は、不自然に空いていたけれど。
しっかりとした声が。

『誕生日、おめでとう。・・・翡翠』

最後の名前を呼ぶ声が、とても優しく。
ボリュームを上げなければ、聞き逃してしまいそうな小さな声で。

『あの、・・・愛して、います』

心に熱がともるとは、こういうことを言うのではないのだろうかと思った。
どんなに私が言い募ろうとも、聞くことがなかった言葉。
それが今、耳元で、囁くように。
彼の口から、直接聞けないのだけは、どうにもいただけないが。
これも、どこと無しに風情があるように感じる。

「さて。可愛い人の可愛い贈り物に、どうお返しをすべきかねぇ」

「・・・っ聞いたのですね?」

ヘッドフォンに集中していたせいか、帰ってきた彼に気づかなかった。
視線をそちらに向けると、私の視線を避けるように彼はきびすを返して。

「幸鷹」

「何です、私は疲れているので、もう休みたいんですが」

呼び止めると、ぎくしゃくと動きを止める。
声は、必要以上に平坦で。
それが余計、彼が無理をしているのを感じさせる。
切りそろえられた髪から覗く耳やうなじが、朱を浮かべている。

「感想は、聞かなくていいのかい」

「明日で結構です」

「ふぅん。では私は、今日の寂しさを紛らわすために、これを繰り返し聞いていようかねぇ。特に、最後のあたりを」

「・・・っ返しなさい!」

「おや、これは私がもらったものだよ」

腕を伸ばしてくる彼から、ウォークマンを遠ざけ。
逆にその手を絡めとる。
逃れられないように、硬くつかんで。
耳に直接、吹きかけるように。

「どんな長い恋文よりも、心に来るものがあるね、幸鷹」

息に乗せたその言葉に、彼の体が粟立つ。
それが決して不快感からくるものではないと、お互いに知っていて。

「ねぇ、お礼をしたい。させて、くれるだろう?」

「・・・」

沈黙は、無言の合図。
わななく唇にそっと触れて。
どんな蜜よりも甘いそれを味わいながら、濃密な夜を。




文明の利器とは、風情がないものだと思っていたが、意外に良いものだね。
・・・幸鷹の誕生日には、私からもMDを贈ろうか。



END

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