徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。 二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。 |
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。
遙かなる時空の中で2、翡翠×幸鷹で京編です。
全年齢対象だとは思いますが、ちょっと大人向け表現が多めです・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)
(遙か花街より再録)
【宵闇の戯れ】
中納言兼検非違使別当藤原幸鷹という男は、その名に恥じぬ立派な男だ。
彼は謹厳実直、清廉潔白を地で行くような男である。
おおよそ彼に、不実や怠惰などという言葉は当て嵌まらない。
しかし、それは彼の昼の顔。
彼の瞳と同じ色の陽光が照らし出す、明るい場所での彼の姿だ。
だが、彼もこの世に生を受けた一人の人間であることには変わりない。
聖人君子な人間など、この世には存在しないのだ。
陽が陰り、辺りを夕闇が支配して行く。
秋の夕暮れはすぐに闇に沈み、月が上るまでは心許ない星明かりのみが辺りを薄ぼんやりと照らし出す。
月が上るまでのわずかな闇に身を紛らせて、翡翠は左京六条にある藤原の庭へと舞い降りた。
屋敷は夜の帳に包まれ、静まり返っている。
そんな中、ゆらゆらと灯を漏らす一角。
それが幸鷹の居室であるということは、先刻承知の上である。
翡翠は迷う事なく、そこへ庭を突っ切って行った。
『話がある。今宵、屋敷に来るように』
そう、睨むように告げられた言葉。
それは二人にとっての、いや翡翠にとっての合図に外ならない。
かさり、と了解も得ずに御簾を押し上げ、室へ滑り込む。
文机に向かい背を向けていた幸鷹は、振り向きもせず優雅に左手を持ち上げた。
かすかな風に揺られていた燭台の炎が、消え失せ、室内を闇が包む。
幸鷹が明かりを消したのだ。
ようやく上った月が御簾の間から、わすがに室の中を浮かび上がらせている。
燭台の明かりに慣らされて、視界が定まらない翡翠の耳を衣擦れの音が掠めた。
暗闇に慣れた瞳が、自分に差し出される白い手を見取って、翡翠は恭しくその手に口付けた。
指の形を辿るように、爪の一枚一枚を愛おしむように口唇を触れさせる。
脇息に凭ながら、それを眺めていた幸鷹は、不意に翡翠の口の中に指を滑り込ませ、舌を押さえ付けた。
急な刺激に、翡翠は一瞬、吐き気を覚えたが、幸鷹の指はそのままに、窺うように視線を向けた。
不機嫌そうな幸鷹の表情に、翡翠はたじろぐ。
「私は舌を使う事を許した覚えはないが?」
玲瓏と響く声に、侮蔑の色が混じり、柔らかな舌に、きり、と爪が立てられる。
「我慢出来なかったのか? 相変わらずはしたない男だな、お前は」
翡翠の口から指を抜き出して、唾液に塗れた指を、幸鷹は単の袷にかけ、片方の肩を抜く。
御簾越しのかすかな月明かりに、白い肌が浮かび上がり、翡翠は小さくのどを鳴らした。
「そんなに舐めたいのなら、舐めさせてやろう。だが歯など立てるな」
その許しを得て、翡翠は幸鷹の肌に口唇を落とす。
美しい流線を描く鎖骨に舌を這わせ、胸に色付く実を含み込んではしゃぶる。
手を使う許しを得ていない今、愛撫を加えるにはいささか不自由ではあるが、それでも翡翠は貪るように幸鷹の肌に舌を這わせた。
奇異な感情であるとは認識している。
ただ諾々と幸鷹に命ぜられるまま、彼の艶事に付き合うというのは。
だが、こちらの感情など斟酌せず、冷ややかに己が快楽のみ追い求める幸鷹を翡翠は美しいと思っている。
また、彼に命ぜられ、蔑まれ、叱責されながらも、彼の劣情の矛先が自分であることに、翡翠は言いようのない高揚を覚えているのも事実なのだ。
「…ん…、…んっ。…ぁん…」
翡翠に自ら動くことは一切許さず、幸鷹は翡翠に跨がり身を揺らす。
快楽を拾う幸鷹の表情は溶け切って、見上げる翡翠はそれだけで滾る熱を感じる。
不意にきつく締め上げられ、翡翠は遂情する。
体内に迸しる熱に、幸鷹も背をしならせ頂きを極めた。
濃密な気配の漂う室に荒い息がこだまする。
快楽の余韻に浸ったまま、幸鷹は翡翠の胸に寝そべった。
「…しばらく、枕になりなさい…」
悦に掠れた声でそう告げて、幸鷹はゆっくりと瞼を閉じた。
ほどなく、安らかな寝息が翡翠の耳に届く。
穏やかに眠りにつく幸鷹の髪を軽く梳く。
目覚めれば、また昼の顔に戻る検非違使別当殿のつかの間の夜の顔。
それを現在は、恐らくは独り占め出来ていることへの恍惚。
そして、自分が京に上るまでの間、どうしていたのかという不快感。
相反する感情に漂いながら、腕の中で遊び疲れて眠る幼子のような幸鷹を、もう一度抱き直した。
*** おわり ***
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何だか、書き始めた当初と方向性が変わってしまいました。
下僕攻×女王受をやりたかったんですが。
もっと幸鷹さんに罵らせて、翡翠さんの被虐歓喜の描写をしたかったんですが、途中から恥ずかしくなってギャグに走りそうになったのを必死で堪えたらこんなことに。
携帯で小話の打ち込みはエラく疲れますね…。