徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。 二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。 |
多少BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。
遙かなる時空の中で5 龍馬×帯刀の現代版です。
何だか帯刀×龍馬にしか見えなくもないですが、龍馬×帯刀だと言い張ります。
【 coldly day 】
手を伸ばせばつかめる位置にいて、触れることだって出来るはずなのに。
いつだって、その手は冴え冴えとした月光のようにひやりと冷たく、つかませてもらえない。
海外周遊から戻って、初めての朝。
昼間は暑い季節だが、陽が上りきる前の早朝はまだ過ごしやすく。
目映い朝陽を避けて、龍馬は肌触りのよいシーツをかぶり直した。
薄手の布地とはいえ、それでもいくらかは日差しを遮ってくれる。
やわらかくなった光に寝直そうと、昨夜腕に抱いて眠った体をもう一度引き寄せようとしたが、その手に触れたのはひんやりと心地よい肌でなく、ふんわりとした毛玉だった。
あれ、と思い、薄っすらと瞳を開けば、不機嫌そうな金色の瞳と目が合って、その瞬間に引っかかれてしまった。
「……白波ぃ…」
起き抜けでまだぼうっとした頭のまま、不満だけを載せてそう口を開けば、白波と呼ばれたすらりと美しい猫は、ちらりと視線を寄越しただけで、ベッドの上からひらりとどこかへ行ってしまった。
どうやら難を逃れるため、龍馬の目の届かない所に避難してしまったようだ。
帰国のための長時間のフライトと時差によるダルさで、龍馬は後を追う気にもなれず、そのまままた日差しを避けるように突っ伏した。
そもそもこうして龍馬が目覚めて探した肌が、手元に戻ってくる事などめったにない事だ。
その事に慣れていた龍馬は、いつもの事だとまた眠りに落ちていったのだった。
日差しが強くなるにつれ、光を逃れるようにうつ伏せになって眠っていた龍馬は、扉の開く音に意識を覚醒させた。
決して大きな音ではなかったが、床を踏む聞き慣れた足音も聞こえる。
外に目を向ければ、陽は中天にあるのか、差し込む光こそなかったが、目に痛いほどの鮮やかな景色が見て取れ、龍馬は身を起こし大きく伸びをしてから、ベッドを抜け出した。
寝癖のついた頭をガリガリとかきながらリビングに辿りつけば、本来のこの部屋の主の帯刀がゆったりとソファに腰掛けて何やら書面を眺めていた。
その膝では、朝、龍馬の手を引っかいた白波が気持ち良さそうに腹を撫でられていた。
リビングに現れた龍馬を、一人と一匹は気に留める素振りもなくそれぞれにくつろいでいて。
何となく面白くない龍馬は、帯刀の横へとどっかりと腰を下ろした。
ソファが揺れた事で、一瞬身構えた白波は、またすぐにもとのように帯刀の膝に横になり、その帯刀は書面から視線を外しもせずに口を開いた。
「ようやくお目覚め? 人の家でずいぶんと暢気なものだね」
「あー、まぁそう言うなって。何か居心地いいんだよ、ここ」
帯刀のそっけない言葉にもめげず、その肩を引き寄せようとした龍馬だったが、それは果たぜず書面でぱしりと顔を叩かれた。
紙面で視界を塞がれて見る事は出来ないが、白波の威嚇の声も上がっている。
どうやら双方の不興を買ってしまったようだ。
「起き抜けで盛るんじゃないの」
「別に盛ってるわけじゃねーぞ。ただ何つーかその、そう。すきんしっぷ不足っちゅーヤツだ」
からりと言ってのける龍馬に帯刀は胡乱な視線を寄越した。
昨夜帰ってきてから、決して薄くはない夜を過ごしておいて、まだ足りないと龍馬は言う。
帯刀は呆れ顔を隠しもせずため息をついて、龍馬の顎を取ってその瞳を覗き込んだ。
「やっぱり盛ってるんじゃない。何? どうせなら昨夜、腰が砕けるまで搾り取った方がよかった?」
「え、ちょっ・・・」
口唇が触れるぎりぎりの距離で、帯刀は嫣然と微笑む。
するりと太ももを撫でられて、龍馬の中にちらりと欲の炎が灯り、スキンシップ不足と思っていた龍馬がその据え膳を逃すはずもなく。
慣れた体に手を伸ばしたのだが、勢いよく鼻頭に息を吹き付けられて、それは果たせなかった。
「な、今のでそりゃねぇだろ」
「君は馬鹿なの? 今日はこれからゆき君に帰国の報告に行くのでしょ」
指摘されて、龍馬は時計に目を向ける。
確かに昨日は平日のためゆきは学校で、龍馬の帰国自体夜ということもあって、休日である今日に報告するということにしたのだった。
大切なゆきとの約束を反故にするのは、龍馬も本意ではない。
だが、どうにも伸ばした手の引っ込みがつかない。
「まだ時間はあるだろ?」
「君ね、二度と使えなくして欲しいの?」
食い下がってみるものの、鮮やかな笑顔に一蹴される。
それは本当に見事な、非の打ち所のない笑顔。
それゆえに、帯刀が本気なのだとうかがわせる圧力を持っていた。
いくらなんでも、使い物にならなくされたのでは、龍馬とて堪ったものではない。
冗談として受け取れそうな内容だが、帯刀は口に出したことはたいていはやってのけてしまう。
だからこそ、これ以上は食い下がれず。
「すいません、俺が悪かったです」
「物分りのいい子は嫌いじゃないよ」
しぶしぶといった感は拭えなかったが、謝罪を口にする龍馬に、帯刀はにこりと今度はやわらかく微笑んだ。
そして卓上の書類を整理して、書斎へと消えていく。
その姿を見送って、ごろりとソファに寝転がれば、小さな金色の瞳と目が合った。
「お前のご主人様は、冷てぇよなぁ」
帯刀が立ったことで、ソファの上へと場所を変えくつろいでいた白波に、少しばかり慰めてもらいたい気持ちも手伝って手を伸ばすが、それすらも帯刀同様ひらりとかわされてしまう。
ちらりとこちらを見やった白波は、そのまま龍馬の手の届かない反対側のソファへと移動してしまい。
「お前も冷てぇ・・・」
何事もなかったようにくるりと丸くなって寝入ってしまった。
またもう行き場を失った手を、龍馬は力なく落とすしかなかった。
手を伸ばせばつかめる位置にいて、触れることだって出来るはずなのに。
いつだって、その手は冴え冴えとした月光のようにひやりと冷たく、つかませてもらえない。
―終―
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いつもはタイトルから決めて書き始めるんですが、今回は後付だったので非常に困りました。
なので用法が間違ってる可能性大。(汗)
えっと、「つれない日」というつもりです・・・。
何だか非常に帯龍くさいですが、本人は龍帯のつもりです。
いつものごとく、ヤマもオチも意味もない感じです。
ただ、小松さんにも猫にも冷たくされる龍馬が書きたかっただけ、ゴメン龍馬。
りょまこまが好きというだけの代物です。
もっと増えないかなーという期待も込めて、自家発電中です。