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徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。
二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。
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創作の小話です。
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。

遙かなる時空の中で2、翡翠×幸鷹でパラレルです。
全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)

【 私の専制君主 】


「何だって私がこんな事を・・・」

そう不満をこぼしながらも幸鷹は、眼前に広げられた汚れ物をせっせと洗い続けていた。
主に命令された事とはいえ、本来なら自分はこういった用途に使われるものではないという不満が、ふつふつと立ち上ってくる。
人の姿を取ってはいるが、彼は人ではない。
妖、と呼ばれる、人ではないモノなのだ。
本来、人に恐れられる存在である彼ら妖は、己の力を超えるものに対してのみ、従う。
そして、さまざまな条件が重なり、唯一主従の契りを結んだ相手にのみ、忠義を尽くす。
その主従の契りは一度交わされれば、主が契約を破棄するその時まで、永遠に持続される。
つまり、絶対服従なのだ。
力ある妖の彼らが、同属の妖ではなく、人間に付き従うのは、力によって負けをしらしめられた結果。
つまりは、特殊な力を持つ陰陽師などの、霊力の高い人間に。
そういった人間は契約したさまざまな力を持つ妖を、下僕として己の仕事に随行させたりするのが通常だ。
だが・・・。

「あぁ、それが終わったら、食事の用意も頼むよ?」

たすきがけで、必死に洗濯をする幸鷹を楽しそうに縁側に寝転んで見やりながら、翡翠は次の指示を出す。
結いもせず流すに任せた長い髪を、指で弄びながら。
そう、幸鷹が何の因果か主従の契りを交わしてしまったこの翡翠と言う男は、確かに高い霊力を持ってはいるが、陰陽師でも祈祷師でもなく、とにかくそういった類の人間では全くなかった。
それも、あろう事か、ほぼ山賊のような道楽万屋だったのだ。
本来の力を全く使う事もなく、ただひたすら炊事などの家事ばかりやらされている幸鷹は、ある意味かなり欲求不満だった。
それでも、彼の身の回りの世話を焼いてしまうのは、もともとの律儀な性格と、あまりにも彼が身の回りの事に無頓着すぎて放っておけないからだったからなのだが。

「・・・いい加減にして下さい! 私は家事をする為に貴方の下僕になった訳では・・・」

「そうは言ってもねぇ。私は陰陽師とかそういった類の人間ではないし。それに、私を主に選んだのは君だろう? 私だって好んで君を下僕にした訳でもないし・・・」

いい加減、我慢しきれないと叫んだ幸鷹に、翡翠は柳のように言葉を返した。
その言葉に、幸鷹は一瞬心臓を引き絞られたような痛みを感じる。
だが、その痛みを顔に上らせる前に、小さく唇を噛んで、洗濯桶と洗濯物を持って翡翠に背を向けた。

「おや、どこに行くんだい?」

「食事の支度をしてきますっ!」

翡翠は何気なく発した言葉なのだろうが、主従の関係を結んでしまった妖には、必要ない、と言う言葉は存在を否定されたも同然の言葉だ。
幸鷹は綺麗にその心を隠したつもりだったのだろうが、表情よりも力なく下がった黒く豊かな毛並みのしっぽと、同じ色の少し大きめの寝そべった耳が顕著に心を表している。
怒らせながらも、小さく揺れているその肩は、必死に涙をこらえてでもいるのだろう。
悲しみを押し殺しながら、幸鷹は土間の方へと向かっていく。
それを声もかけずに見送って、幸鷹の姿が戸口に消えてから、翡翠は小さくつぶやく。

「そんな君だから、つい意地悪をしたくなるんだ」

いつも毅然と前を向いているのに、時々心細げに翡翠の方を伺ってくる仕草。
閨の中で、嫌だ、止めろと抵抗する姿。
どんなに無体を働いたとしても、それでも最後には否定の言葉を吐きながら翡翠の手の中に落ちてくる従順さ。
そのどれもが、愛らしく、愛おしい。

「君は気づいていないのだろうけれど、私が君に逆らえないって事を君は知っているのかな?」

聞くべきもののいないつぶやきは、のどかな庭にぽつりと落とされ、誰も拾うものはない。


END

***** あとがき。*****************************************

はい、やっちゃいました、人外魔境モノ。
拍手の方で、それもあり!とおっしゃってくださった方がいたので、調子に乗ってみました。
でも多分、予想されていたものとはかなり違った出来なんではないでしょうか?
どうでしょう? ○杏さん。(笑)<ここで聞くなよ

実はまだ明らかにしていない、微妙な設定とかもいろいろあるんですが、それはまた機会があれば。
ちなみに、もう一つ似た設定の「龍と~」はこれとは全く逆の主従関係だったり・・・。

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