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徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。
二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。
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創作の小話です。
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。

遙かなる時空の中で混合、地×天でパラレルです。
全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)

【真昼の月】


それは夢だと解っているのに。
現実であればと願ってしまう弱い自分がいる。
現実のような鮮烈さと、ぬるま湯のような心地よさと不快感。
曖昧の中に存在する確かな現実味。
そしてそれを望んでしまう、愚かな自分。
眠りの中、夢が足音を伴って近づいてくる。





「友雅殿」

「あぁ、鷹通。これは情けない姿を見られてしまったね」

頬を少し腫れさせて、友雅が薄く笑った。
鷹通はどう言葉をかけていいものか迷った挙句、その腫れた頬にそっと手を伸ばした。
少し冷たい秋風にさらされて冷えた鷹通の手に、友雅の頬は確かな熱を持って痛みを訴えていた。

「いやはや、近頃の姫君には驚かされるね。まさか邸にまでやって来て扇で打たれるとは」

友雅の言うとおり、先程どう見ても深層の姫君といった艶やかな袿を羽織った女性が、その外見を裏切るように扇で強かに友雅を打って庭を出て行った。
鷹通は、その一部始終を垣間見てしまったのだ。
幸い、その醜態を見られた女性は鷹通には気づいていなかったようだが。

「まぁ、これも身から出た錆だからね。君が為を思えば、さして苦にもならないよ。ねぇ、私の藤の君」

「友雅殿・・・」

己の頬に触れる手にそっと指を滑らせ、友雅はその白い指に口付けた。
決して姫君のように細くも小さくも、繊細でもない男の指に。
けれどその手は、友雅にとっては何よりも安らぎをもたらしてくれるあたたかなものなのだ。
宮中で、色の噂にその名を載せない事はないというほどの友雅を変えてしまったのは自分。
そう自覚しながらも鷹通は、戸惑いと躊躇いの中、その口付けを静かに受ける。
けれどその戸惑いとは裏腹に、安堵している自分も確かにいる。
彼はもう、大勢の女人ではなく自分を見つめてくれているのだということに。
彼の手を一夜だけでもと望む多くのものを踏みにじりながら、それでも鷹通は悦びを感じすにいられないのだ。
そう、望んだのは自分だ。
夢でも構わないから、あの大輪の牡丹のような彼を己のものにしたいと。

「私の・・・、連鶴の君」





「どういうつもりです」

「どうもこうも。見てのとおり、私が失策して君に追捕されてしまったのだよ」

今まで風のようにすり抜けては微笑んでいた海賊が、格子という網の中で傷つき縄をかけられていた。
その様はまるで、翼をもがれた鳥のようで、あまりにも滑稽に幸鷹には思えた。
牢を開け、中に踏み込み、そして外から施錠させる。
そばに控えていた部下に、適当な理由を付けて半刻はこの牢から人払いをと命じる。
一瞬、部下は瞠目したが、牢は外から施錠され、賊には縄がかかっている。
もし上役の幸鷹の命が奪われる、もしくはありえないが懐柔されるようなことになろうとも、脱出は不可能と思ったのか、部下は黙礼してその場から去っていった。
足音が遠ざかり、人の気配が消えてから、幸鷹は翡翠の前で膝を折った。

「このようなところで膝をついては汚れてしまうよ、別当殿」

「構いません。・・・翡翠、何故・・・」

「さて、何故だろうね。可愛い人の瞳に囚われてしまったのかもしれないね」

翡翠の海色の瞳が幸鷹の陽光の瞳を捉え、ふわりと微笑んだ。
幸鷹の心がしくりと痛む。
血のこびり付いたこめかみにそっと触れる。
痛々しい傷は乾いて、手のひらにざらついた感触をもたらした。
口唇も、殴られた拍子に歯が当たったのか、切れている。
そこだけではなく、様々なところに痣や傷が浮かんでいるが、やはり美しい顔に刻まれた傷はより無残に幸鷹の瞳に映った。

「何故あなたが追捕など。・・・捕らえられているのは、あの日から攫われてしまったのは私なのに」

「泣かないでくれまいか。お望みならば、そうさせていただくとしよう、私の可愛い人」

うつむく幸鷹の顔を、束縛されているはずの指が優しくすくい、口唇を奪う。
突然のことに瞳を見開くと、優しげに細められた翡翠の瞳が飛び込んできた。
そして子供でも抱きかかえるように軽々と幸鷹を抱き上げ、いとも簡単に翡翠は牢から抜け出た。
風に浚われるように、景色が後ろへと流れていく。
さまざまな声が、蜃気楼のように遠くなっていく。
けれど、自分を抱く、確かなぬくもりが、体を包んでいる。
そう、望んだのは自分だ。
夢でも構わないから、何者にも束縛されることなく、この海のような男に浚われたいと。
この京で、過去を持たぬ幸鷹にとって、唯一信じられる確かに持っている記憶の中でより一段と鮮やかな記憶のこの男に。

「私の・・・、翡翠」





「あ、景時さん。洗濯物・・・」

「うわ、降って来ちゃったね。すぐに取り込むから、譲君は座ってて?」

「え? えっと、じゃぁお任せします。俺は夕飯作りますね」

穏やかな休日の午後、景時の暮らす部屋で取りとめもなく二人で時間を過ごす。
二人で何かするわけでもなく、それぞれが好きなことを好きなようにして過ごす時間。
ただ、お互いの存在を背中合わせにそのぬくもりで感じ、時々、思い出したかのように相手を振り返ると、示し合わせたかのように視線があって、互いに微笑む。
景時が微笑んでくれるだけで、譲は心があたたかくなるように感じる。
そんな、ありふれたような日常が、譲はただ嬉しくて心地よかった。
あたたかな笑顔と、あたたかな日差しの中で、譲は過ぎ去った日を思い出した。
夢だったのではないかと思ってしまうような戦乱の中で、ただ我武者羅に生きることだけを考えて駆け抜けていった日々。
ずっと守りたいと思っていた望美が白龍の神子として、鎌倉という異世界を救い、彼女自身が見つけた道を歩み、譲と道を違えてしまったのは、ついこの間のことなのに、遠い昔のように譲には感じられた。
いや、むしろ、景時という存在がなければ夢であったのではないかと思えてしまうほど、日常からかけ離れた日々だった。
だが、その日々が夢でないことは、ともに過ごす景時がいることで現実に自分の身に起こったことだと証明されている。
そう、景時はその異世界からこの自分のいる世界へとともにやってきた存在なのだから。
ふと景時を振り返れば、彼も譲を振り返っていた。
翳り始めた日差しが景時の優しげな瞳に、炎のようで闇のような夕闇の色合いを溶かし込んでいく。
その色は、あの世界で感じた混沌にも似て、不意に譲は不安を覚えた。
その思いを振り切るように、視線を外すと、窓にぶつかる水滴が見え、譲は声を上げたのだった。
自身で上げた声に、場の雰囲気が一転し、譲は安堵した。
譲自身、景時を手伝おうと腰を上げたのだったが断られて、半端にあがった身の置き場を探し、夕飯作りという任についた。
キッチンで、手を洗っていると、カウンター越しに景時が洗濯物を適当に篭に放り込む姿が見て取れ、譲は小さく笑った。
せっかくしわを伸ばして干したのに、そんな風に放り込んだらまたしわになってしまうとか、だけれどそんなところが景時らしいとか、そう思って。
笑いながら、譲は適当に材料を出して、包丁を握った。

「・・・っ!」

洗った材料を手に、皮をむこうと刃を滑らせると、慣れた仕草のはずなのに、刃がすべり自身の指を傷つけた。
赤い血が、皮膚の裂け目から盛り上がり、ぎりぎりの張力を破って流れ出す。
自分にしては珍しい失敗に、譲はしばし唖然としてその傷を眺めてしまった。

「譲くんっ」

景時の声にはっとして、声のした方へ視線を向けると痛そうな顔をした景時の視線とぶつかる。
景時はすぐに譲のそばまでやって来て、傷ついた手にそっと手を添える。
景時の顔は、まるで自分が怪我をしたかのように痛そうな表情をしている。
そのことに、また譲は小さく笑った。

「何笑ってるの、譲君。早く手当てしよ」

「これくらい、平気ですよ。舐めておけば治ります」

こんな怪我にも入らないような小さな傷にあわてる景時が、譲には少しおかしく思えた。
あの、異世界では、もっと大きな傷を負うようなこともあった。
それこそ、生死に関わるようなものも。
だが、景時はこちらの世界でもあちらの世界でも、たとえどんな小さな傷であろうとも、心から心配してくれる。
そのことが少し滑稽にも思え、だけれどとても嬉しかった。
どんなに殺伐とした世界にいても、優しさを、痛みを忘れない景時が、譲はとても好きだった。
おおらかそうに見えても、景時はとても繊細な心を持っている。
だからこそ譲は、景時に幸せになってもらいたかった。
安心して眠れる、心から笑える、そんな生活を彼に送らせてあげたかった。
だから戦がいったん平定したとき、譲は景時にこちらの世界に来て欲しいと願った。
彼を幸せにしてあげたかったから。
そして景時は、その譲の言葉に笑顔を返してくれ、今の生活を送っている。
何不自由なく、あたたかな生活を。
だが、不意に景時が、遠くを見つめることがあることも譲は気づいていた。
それはきっと、離れてしまった、捨て去ってしまった世界に置いて来てしまった大切な人たちへ送られる眼差し。
今も、譲を心配しながらも、一瞬だけ、景時の思考が遠くの人々へと向けられ、彼方の世界へと沈んだ。

「景時さん・・・」

その視線に、譲は声をかけずにはいられない。
けれど、その先に加える言葉を、譲は持たなかった。
捨てさせたのは譲自身で、そんな自分がいったい何を言えばいいのか譲には解らないのだ。
景時はそれを理解していて、優しく朗らかに笑う。

「譲君、俺は幸せなんだよ。君という人と、こうしてゆっくりと過ごせる世界で暮らせるんだから」

その言葉に、譲は心が痛くなる。
こうなることが解っていて、それでも譲は何度同じ選択が来ようとも同じ答えしか導き出せないことに。
彼の肉親、仲間、苦楽をともにしてきたすべての者たちと引き換えにしても、景時をこちらの世界へ呼んでしまう事に。
景時が拒んでしまったとしても、無理にでも連れてきてしまうであろうことに。
そう、望んだのは自分だ。
たとえ、彼から大切なものすべてを奪ってしまったとしても、彼とともにこちらの世界で暮らしたいと。

「景時さん・・・」





それは夢だと解っているのに。
現実であればと願ってしまう弱い自分がいる。
現実のような鮮烈さと、ぬるま湯のような心地よさと不快感。
曖昧の中に存在する確かな現実味。
そしてそれを望んでしまう、愚かな自分。
それは自分自身のそうなって欲しいと強く思う望み。
叶えられない願いが、その思いの強さゆえに、現実を凌駕するほどの鮮やかさで。

眠りの中、夢が足音を伴って近づいてくる。

END

***** あとがき。*****************************************

どっかで見たようなタイトルですね・・・、月姫だったかな?(ぇ)
・・・えらい景×譲が長くなっちゃったかな・・・?(汗)
何か、救われない度№.1な感じのお話になっちゃったような気がしないでもないですね。
つか、それぞれのお話のくくりを同じにしようと思っていたのに、景×譲だけ、それが出来ませんでした。
この二人だけ「俺の・・・、○○」という件が思いつかなかった・・・。
し、幸せなお話を書いてみたいですね~、誰か私のネガな頭の改造してやってください。(汗)

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