徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。 二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。 |
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。
遙かなる時空の中で2、翡翠×幸鷹で京編です。
全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)
【 君が為 】
「別当様、少し小休止を打ってはいかがですか?」
近衛府内に設えた文台でこれまでに挙がった案件の処理をしていると、広廂の方から声がかかった。
聞き覚えのない声だったが、日頃あまり近衛府の方に顔を出していない私だ。
すべての役人の顔と声を覚えているわけでもなく、たぶん、名だけ見て会ってはいない部下の中の一人だろうと、その時は気にも留めなかった。
「あぁ、すまない。だがキリのいいところまでやっておきたいんです」
「そうですか・・・。ではこちらに茶を置いておきますゆえ、冷めぬ内に」
顔も上げず筆を滑らせながら答えた私の声に、懸盤か何かを置く硬い音と気落ちしたような若い声がそろそろと返ってきた。
「やはり、今戴こう。根を詰めすぎては捗るものも捗りませんね。ありが・・・」
その声に、少しばかり申し訳ない気がして筆を置き、顔を上げたところで、私は凍りついた。
声色でも使っていたのだろう、目の前で楽しそうにこちらを見下ろしているのは、見知らぬ部下ではなく、よく見知った伊予の海賊だったのだ。
「部下の前では優しく微笑み、尚且つ素直に礼も言えるのだね。いや、私の前以外では、というところかな」
「お、お前・・・っ」
「やぁ、別当殿。挨拶が遅れてすまないね。引きこもっていると聞いたもので、様子を見に来てみたよ」
ちょっとお隣の様子を見に、とでも言うように翡翠は朗らかに笑った。
だが、私はそれに笑顔を返せるはずもない。
ここは、京の、それも大内裏内にある近衛府、いわば彼にしてみれば敵の本拠地で、簡単に様子見にこれるような場所ではないのだ。
それも海賊の頭、という立場の人間が。
「自分でも言っていたように、あまり根を詰めすぎるのはよくないよ。たまには気分転換もしないと。さあ、茶でも飲んで落ち着きたまえ」
「お前、ここがどこだか・・・っんむ、ん、ん、・・・げほ」
私の反論をふさぐように、無理やり顎を上向かされ、茶が流し込まれる。
・・・彼の口唇から。
無理に嚥下させられる茶は、苦味以上にひりつくような痛みをのどに伝え、私は咳き込んだ。
私の抵抗によって、茶はすべては口に収まらず、唾液と一緒に私の顎とのど、そして着物を濡らした。
じわりと広がる生暖かい感触は、妙に気持ちが悪く、私は首元を緩めた。
罵倒を浴びせようと口を開くが、咳き込んでそれも言葉にならず、仕方なく私は視線だけで抗議を突きつけた。
翡翠は少し肩をすくめ、私に視線を合わせるように屈んだ。
「ここは大内裏の検非違使庁で、私みたいな海賊がおいそれと入れる場所でもなく、入ってきたらどうなるか火を見るよりも明らかだと、君は言いたいのだね」
まったくそのとおりなので、苛立ちもそのままに睨み付ける。
八葉である今、この男を捕縛させるわけには行かない。
だが、それは一部のものしか知ることのない事実で、公の元では彼は単なる海賊だ。
地下でも殿上人でもないものが入ってもとがめられる大内裏で、ましてや海賊など、どうやっても言い逃れはできない。
それをのこのことこんなところまで入り込んで、何が落ち着いて茶でも、だ。
私の考えていることがわかったのだろう。
翡翠は大げさにため息をついてみせ、私の口元をその身にまとう小袿の袖で拭った。
「そんなに眦を吊り上げないでおくれ、可愛い顔が台無しだよ。君が為なら、そんなことは瑣末なことだよ」
「何・・・?」
「可愛い人のためならば、多少の難など、在って無きが如しだよ。どうしてだろうね、君には何だか奉仕したくなるというか」
「何だ、それは」
ゆるりと視線を巡らせ、私の瞳を捉え、翡翠が蠱惑的に笑う。
碧い瞳に惑わされたように、私は一瞬見惚れてしまった。
それに満足したように、翡翠は口角を上げて。
「そうだね、いつも献身ばかりしている君に、ヨロコンデもらいたいというか」
「・・・。喜ぶ、という部分に妙なニュアンスを感じるんだが」
「にゅ・・・、何だって?」
「あ・・・? 何でしたっけ。ああ、そう。妙な含みを感じる、といいたかったんだ」
翡翠に疑問を投げかけられ、自分で自分の言った言葉に疑問を感じる。
それはいったいどういう意味の言葉だったのか。
答えを探そうと思考をめぐらせると、何かがきしむような、そんな痛みが自身を襲い、私は額を押さえた。
思考が靄に包まれるような、そんな曖昧な感覚。
何を考えていたのかさえ、見失いそうになって、あわてて前後の会話を思い出し、言いたかった言葉を言い換える。
だが、言い換える前、何と言ったのか、むしろ言葉を発したのかさえ、記憶が曖昧になっていく。
自分の記憶が自分のものでないような、漠然とした不安が身を覆おうとしたその時、それこそ瑣末なことだというような翡翠の声が私を現実に引き戻した。
「ふ・・・ん。まぁ、どうでもいい。・・・よく解っているじゃないか、別当殿」
「は?」
「もっと君を悦ばせてあげるよ。もっと、ね」
終わったことは終わったことと、区切りを付けるように、翡翠は自分の話題に軌道を戻した。
そして、無造作に私の石帯を外し、袍や指貫を毟り取っていく。
「なっ・・・。や、やめ・・・っ」
「君が為に、こんなところまでやってきたのだからね」
抵抗を試みるも、強い男の腕に組み敷かれて成す術もなく。
こんな、大内裏の使庁の中で、誰が来るとも解らぬ緊迫感の中。
私は翡翠の奉仕という名の愛撫で、許しを請うても身も世もなく啼かされ続けた。
END
***** あとがき。*****************************************
翡幸期間続行中。(笑) 実は仕事中に考えました。<お前・・・
ホントは、最後の数行から後のところばっかり妄想してたんですが、それをここに書くのはまずいかなぁ、と思い、それまでのあらましと朝チュン状況でくくってみました。
・・・読む方は私の仕事中の妄想の(ただのエッチ)話のほうがよかったかな・・・?(笑)
ここでは書けません、だってホントねちっこい30男の言葉攻めだったんだもの・・・。