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徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。
二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。
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創作の小話です。
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。

遙かなる時空の中で2、翡翠×幸鷹で伊予編です。
全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)

【 海鳴りが聞こえる 】


「君は本当に面白い男だね、国守殿」

「何だ、それは」

「言葉のままの意味だよ」

尋ねたいことがあると、突然やって来て、ならばと二人で沖に漕ぎ出した小船の上、翡翠は面白そうに幸鷹を見てそう言った。
話を聞く条件として、二人きりで、海の上でだと翡翠が言うと、幸鷹の従者は猛反対した。
海賊と、それもその頭と二人きりなど、危険すぎると。
だが、幸鷹本人がその警告を切り捨て、話があるのは自分の方だと、翡翠が出した条件をあっさり飲んだ。
それゆえの翡翠の言葉だったのだが、言われた幸鷹は訝しげに翡翠の顔を伺い見て、ため息をついた。
陽の光の下、優雅に微笑む海賊の考えは杳として知れず、幸鷹は視線を翡翠から後ろに見える遙か水平線に移した。
静かに波打つ海は、太陽の光を反射して、きらきらと輝いている。
幸鷹は、思う。
この目の前の男は、海のようだと。
表面上は静かで美しく、流れに身を任せているようで、それでいて荒れれば荒々しく人を飲み込み、還す事を許さない力強さを持っている、人の手には負えない、自然そのもののような男だと。
幸鷹は、その男に朝廷への出仕を何度となく勧めているが、当の翡翠はのらりくらりとそれをかわし続けている。
今回も、何度目になるか解らない、その話をするつもりだった。
朝廷からも、外洋からも敵視されるような、そんな不安定な立場に、どうしてそこまで固執するのかと。
だが、この海を見ていると、そんなことは瑣末なことで、この男はただ自由に生きているだけなのかと思いもする。
ただ、自分のしたいことをしているだけ、それがたまたま海賊だったというだけのような。
そう考えると、たとえこのまま埋もれさせるには惜しい能力を翡翠が持っているにせよ、朝廷というあらゆるものに縛られたあの場所は、この男には不釣合いなように感じて、幸鷹は言葉を捜しあぐねた。

「ねぇ、国守殿。あんまりにも無防備な顔をさらすものじゃないよ」

思考の海をさまよっていた幸鷹の意識を、翡翠のそんな声が現実へと引き戻した。

「少し、考え事をしていただけだ」

海に投げていた視線を翡翠に戻すと、声のない小さな笑いを幸鷹は向けられた。
ざざ、と海鳴りとともに風が吹き、翡翠の長い髪を空に乱れ散らせる。
それを梳くでもなく捕らえ、弄びながら、翡翠は幸鷹を覗き込むように掬い見た。

「それが無防備だというのだよ。海賊の、それも仮にも頭の前で忘我の思索など何をされても文句は言えないだろう」

「こんな小船の上で、何をしようというのです」

「さて、何だと思う?」

幸鷹が憤然と言葉を返すと、からかうように翡翠が笑った。
そのことに怒りを覚え、睨み返そうとした幸鷹だったが、それは急に目を焼いた太陽の光によって果たせなかった。
眩しい、と思った瞬間に鈍い痛みが背を襲い、それによって張り倒されたのだと気づく。
そして、うなじに当たる木の感触とじわりと髪の濡れる感触で、頭が船べりから外へと落ちていることにも。
船べりに当たった水が、はねて耳を小さく濡らす。
起き上がろうと腕と腹に力を入れるが、それは翡翠によって阻まれた。

「君はもう少し警戒することを知ったほうがいいよ、国守殿。ここは君が統治する、伊予の国ではなく、海神の支配する海だ」

「解って・・・」

幸鷹は翡翠の腕を引き剥がそうともがき、爪を立てるがびくともしない。
同じ男であるはずなのに、まったく自分の力が通用しないことに、幸鷹は本能的に恐怖を感じる。
怯んでは、恐れてはいけないと自らを叱咤するが、己の意識に反して幸鷹の体は震えていた。

「頭では解っていないようだが、体は正直だね。陸には陸の掟があるが、海には海の掟があるのだということを覚えておきたまえ。海ではね、"力"がものを言う。"力"がなければ、海に飲み込まれ、藻屑となる」

「ちから」

「そう、"力"だ。空を読む力、風を読む力、潮を読む力、舵を取る力。そして、海で生きる猛者を押さえつける力。それを持たないものはそれを持つものに従わなければ、この海神の世では生きていけない。それが海の掟だ」

「海の、掟・・・」

幸鷹が反芻すると、翡翠は綺麗に笑った。
それは空を背に、幸鷹の目にはまさに海神の微笑みのように映った。
ざざ、と海鳴りがやけに近くに聞こえる。

「君は、どの力を持っている? 試してみるかい? 恐ろしくなどないよ」

「え・・・?」

急に目の前がゆがみ、一つだった太陽の光が幾重にも目の前に広がった。
ごぼり、と水泡の上がる音が、やけに鈍く響く。
そのことに、自分が海に落とされたのだと悟り、幸鷹は慌てて海面に出ようともがくが、水を含んだ着物が体にまとわりついて思うように動かない。
腕を伸ばしても、その手は空気をつかめず、水をかくだけで。
本能的に、助けを呼ぼうと開いた口からは、ただ空気が流れ出るだけで、とっさに幸鷹は口を噤んだ。
そして、空がある水面を仰ぎ、幸鷹は驚愕した。
ついさっき落ちたばかりのはすなのに、乗っていた小船は、随分と遠くに浮かんでいる。
潮に流されたのだ、と呆然とその小船を見る。
海の掟だといった翡翠の先ほどの言葉を思い出す。
力がないものは、海に呑まれるという言葉。
それは力に抗う術を持たねば、生き延びられないという言葉。
幸鷹は、ぼんやりと自分はこのまま死ぬのだろうかと、そう思った。
その時、目の前に一対の翡翠が現れた。
ふわりと微笑む宝石は、そのまま心を吸い込んでしまいそうなそんな深い色。
実際、幸鷹はその宝石に魅入られていた。
だから、そっと口唇に触れたそれが、翡翠からの口付けだったことに気づけぬまま、幸鷹は意識を手放した。



小船が船着場に帰ると、すぐさま幸鷹の従者が駆けつけてきた。

「わ、若様!」

「静かにしたまえ。気を失っているから、屋敷で休ませてあげたまえ」

「・・・解りました、失礼します」

翡翠の小袿にくるまれた裸の幸鷹を見て、従者は眦を吊り上げたがぐっと押し黙り、幸鷹と濡れた幸鷹の着物を預かると、頭を下げて港を去った。
その姿を、遠目にも見えなくなるまで見送って、翡翠は小さく呟く。

「さて、怖い海賊に怖い目に合わされた国守殿は、この次は一体いつ、どうやって私の元へと来るのかな」

翡翠は、そう誰にともなく呟き、楽しそうに微笑んだ。
空には優雅に流れる雲が浮き、港には海鳴りだけが響いていた。


END

***** あとがき。*****************************************

翡幸書きたい期間に突入している模様。
なんだかんだ言って、このカプ滅茶苦茶好きなんですよ。
むしろ読みたい。誰か書いて・・・。(切実)
始め漫画で書こうとしてたために、三人称で書いてるのでなんだか妙なことに。
一人称で書けばよかったかな・・・?(汗)

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