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徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。
二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。
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創作の小話です。
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。

遙かなる時空の中で2、翡翠×幸鷹で京編です。
全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)

このお話は、翡翠さんの部下の男の子が語り部です。
コミックス6巻に出てきたスキンヘッドさんの心の古傷を抉っちゃった彼。
(この作中では勝手に勇魚(いさな)くんと命名させていただいております
 また、スキンヘッドの彼を一角(いっかく)、もう一人のハチマキの彼を魚虎(しゃち)と命名させていただいてます)

【 その時、部下は見た! 2 】


月の昇らない闇夜。
頼りない星の瞬きだけが、辛うじて大路を照らす中、その人は歩いていた。
お頭は、多分、知っていたんだろう。
彼が、この刻限にこの場所を通ることを。
今は京の夜といえばどこだって治安は悪いけど、そこが一人で通るにはことさら物騒だってことも。
だから、こんな夜更けに色町に行くわけでもなく出かけ、人目につかないようにとはいえ、俺たちが付いて来ることも厭わなかったんだろう。

「やぁ、奇遇だね。別当殿」

「夜更けに、いったい何の用です? 不審者として追捕されたいのですか」

相変わらず、つんけんした物言い。
どうして、この二人で刃傷沙汰が起きないのかが不思議になるような雰囲気。
けれどそれは、国守さん(あ、今は別当さんか)の方だけで、やっぱりお頭は楽しそうだ。
ちょっと、ヤバいんじゃないかって言うくらい、お頭は毛が逆立った猫みたいな国守さんを好んでるところがある。

「君になら、追捕されるのも吝かではないが・・・。今、私を追捕したら、可愛い姫君が悲しむんじゃないのかい」

「・・・」

今もほら。
国守さんの答弁をふさぐ形で問いを投げかけて、あの人が困るのを見て楽しんでいる。
長くはないとはいえ、2年以上も付き合いがあって、どうしていちいちお頭の言葉に怒っていられるんだろうか。
いい加減、話半ばに聞き流せばいいのに、持ち前の律儀な性格ゆえか、きっちり聞いてはっきり反応を返してる。
今だって、言い返したいのを堪えて、顔をしかめて奥歯を噛み締めている。
そんな反応が、余計にお頭を喜ばせるだけだって、解ってるんだろうに。

「ふふ。あちらの姫君を悲しませたくないのでね、今はこちらの姫君を無事にお屋敷までお連れしよう」

「誰が姫君ですって?」

「解らないのかい? こんな闇夜に供も連れず、一人歩きしている世間知らずの君のことだ。どこぞの不埒者にかどわかされても文句は言えないよ?」

「こう見えても、私は検非違使別当、多少の武芸の嗜みはあります。かどわかしなどに」

「相手が、一人二人なら、ね」

「・・・!」

「いつまで、こそこそ隠れるつもりだい? 私はこの可愛い人から離れるつもりは毛頭ないよ」

ひっそりと静まり返っていた大路に、ざわりとした気配が流れる。
気配を殺すのが下手なのか、はたまた逸る気持ちを抑えられないのか、俺にさえも隠れてるのがばればれだったやつらだ。
国守さんがこの大路に差し掛かってからずっとへばりついていた、物陰に潜んでいた者達が、お頭の声を契機に、大路へと姿を現した。
数にして、おおよそ10人。
たった一人に対しては、大仰な人数だ。
さすがに、その人数に俺も、一緒にいた一角も魚虎も得物に手をかけた。
けれど。

「ふぅん、姫君を攫うには十分すぎるくらいだが。残念だね、私を相手にするには、素人の君たちでは、役不足だ」

その言葉で、俺たちはその場に踏みとどまり、お頭に従った。
暗に、今は出るな、というその指示に。
国守さんは、お頭と話していた時とは比べ物にならないほど、剣呑で冷ややかな視線を相手に向け、飾り太刀を抜き放っている。
お頭は、その国守さんの姿を楽しそうに眺めたあと、普段は飾りにしか見えない、腰の流星錘を静かに指に絡めている。

「翡翠殿、自分の身は自分で守ってください」

「おや、勇ましいねぇ。降りかかる火の粉は、払うつもりだよ」

互いに視線は合わせず、取り囲むように距離を詰めてくる男たちに視線は向けたまま、背中合わせになったお頭と国主さんが言葉を交わす。
そして、一拍の間をおいて、闇夜の乱闘が幕を開けた。
切りかかってくる太刀をはじき、返す刃で相手を叩き伏せる。
お頭が、巧いこと足払いをかけたり、相手を絡めたりして、国守さんには一人以上の相手を向かわせないようにしている。
国守さんは、切りかかってくる相手に手一杯で、きっとそのことには気付いていないんだろう。
何とか、向かってくる相手を叩きのめしているが、やはり慣れていないのだろう。
3人目あたりから、息が上がってきて、そして、5人目の太刀をはじいたところで体勢を崩した。
太刀の重さに体を引きずられるように、体が右へ傾ぐ。
その隙を逃さず、相手が二の太刀を浴びせる。

「・・・くっ!」

夜闇に、一瞬、朱の花が散った。

「幸鷹!」

お頭が叫んだ時、硬いものをはじく高い音と、やわらかいものにものが当る鈍い音がした。
どさり、とくず折れる重い音。
その音に振り返れば、こめかみあたりを左手で拭う国守さん。
拭ったそこからは、新たな血がじわりとにじんでいた。

「やってくれたね」

ぞっとするような声が、静かにその場に響いた。
それからは、あっという間だった。
流星錘が星の小さな明かりを反射しながら空を舞い、そのたびに一人、また一人と地を舐めていく。
俺たちも、国守さんも、ただ呆然とその様を見ていることしかできなかった。
一際、流星錘が空を舞った、と思った時には、すべてが終わっていた。
空は、何事もなかったように新月の闇に星が瞬き、けれど地には10を数える男たちが沈み込んでいた。

「・・・まさか、殺したのではないでしょうね」

「始めに言うのがその言葉かい? つれないねぇ。殺してはいないよ」

「そうですか」

相手の無事を確かめ、そっと息を吐いた国守さんだったが、お頭が顎を掬ったことで、声を尖らせた。

「別当殿」

「な、何を・・・っ」

「掠めただけのようだね」

「やめなさい」

お頭は国守さんの顎を捉えたまま、額に流れかかる髪をそっと払って、口付けるように傷に舌を這わせる。
沁みるのか、国守さんは体を小さく揺らして逃れようとしたようだけど、お頭はそれを許さなかった。

「傷には、とりあえず唾をつけておくのが良策なのだよ」

「っ・・・。これくらい、放っておけば治ります」

「放っておいて、傷が残ったらどうするんだい」

「女性じゃあるまいに、傷の一つや二つ」

「君の顔に傷が残るなんて、許さないよ」

「私の顔のことだ。別に、お前に許しをもらう必要はないはずだが」

「許さないよ」

「翡翠・・・?」

「顔であろうと、体であろうと、君に傷をつけていいのは私だけだ」

顎を捉えたまま上向かせ、瞳を覗き込むように、お頭は国主さんに告げる。

「ふざけるな」

「ふざけてなどいないよ」

いつも薄く笑みをはいているお頭の真っ直ぐな視線を受けて、国守さんはたじろいだ。
一瞬だけ、見惚れるようにお頭に見入って、そして我に返り少しだけ赤面して、身を離すように腕を突っ張った。
けれど、お頭はそれを許さず、逆に引き寄せるように腰を抱き、国守さんが背けた顔を引き戻すように、目の縁から顎の端に中指を滑らせた。
そして、人差し指で、口唇に触れる。

「私は結構、君の顔を気に入っているのだよ。君が伊予に来たときから。私は気に入っているものに傷がつくのは許せないたちでね」

そういい、唖然としている国守さんの口唇を開かせて、触れるだけの口付けを浴びせる。
突然のことに、されるがままになっていた国守さんだったけど、お頭の言葉と行動に次第に頭に血が上ったのか、猛然と反撃に出た。
鈍い音が、ようやく静まっていた大路に、鮮やかに響き渡った。

「っ!」

「気安く触れるな」

そういって、自業自得だといわんばかりに肩を怒らせて、国守さんは邸のある六条の方へと歩いていった。
お頭は追うでもなく、殴られた頬をさすりながらその後姿を眺めている。
国守さんの後姿がおぼろげに闇に溶け込むくらいに離れてから、俺たちはお頭のもとへと寄って行った。

「一角、念のために別当殿を邸まで見送っておいで」

「へいへい」

一角は言われたとおり、闇に消えそうな国守さんの後を追った。
二人の影が、闇の中に消えていく。

「お頭、大丈夫ですかい。血が」

「そうだねぇ、さすがに少しは堪えたかな。まさか可愛い姫君に拳をもらうとは思わなかったからねぇ」

にやにやにやにや。
堪えたといいながら、お頭は至極上機嫌で、魚虎に心配された口元の血を舐めている。
どうやら、本当に見事に国守さんの拳が決まったようで、口の中を切ったみたいだった。

「ふふ、本当に。あんな瞳で睨まれたら、こっちにまで火がついてしまうじゃないか」

「・・・」

俺も魚虎も、その言葉に返す言葉が見つからなかった。
何故なら、国守さんの消えて行った方を見つめるお頭が、ちょっと気持ち悪いくらいうっとりしていたからだ。
半ば恍惚としたような表情で彼方を見るお頭と同じく、俺は国守さんの消えた方を眺め、またしても心の中で合掌した。


END

***** あとがき。*****************************************

実は一度フリーズしてデータクラッシュ・・・。書く気喪失には十分すぎるダメージです。
・・・遅れた言い訳じゃないですよ・・・?(汗)
しかし、考えた当初、こんな内容だったかな・・・?

(アップ当時はこの話、2日に分けて書いてました。
 前半と後半に1週間くらい間が開いてたんですよ・・・<遅れた言い訳云々)

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