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徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。
二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。
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創作の小話です。
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。

遙かなる時空の中で、友雅×鷹通で人外パラレルです。
全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)

【 河童の川流れ 】


今ではないとき、ここではない場所で。

彼は長い間、生きてきた。
若木のように深い色合いの、ゆるくうねった豊かな髪。
甘い果実のように、響きのよい低い声。
彼には、持つものが何もなかった。
だが、少しその容姿を活用するだけで、糧を得ることには事欠かなかった。
彼は誰もが惹きつけられずにはいられない、類稀な容姿を持っていた。

そう、獲物は自ずから、彼の元にやってくるのだ。



「あの、何をしているのですか?」

「うん?」

とろとろと、木漏れ日の中でまどろんでいると、涼やかな声が耳をくすぐった。
その声音に誘われて、瞼を持ち上げると、太陽の光を集めたような、穏やかな瞳が私を覗き込んでいた。
ひとつにまとめた長い髪が、風に遊ばれるまま、さやさやと小さく揺れている。
何故だろうか、彼がそこにいるだけで、この場の空気が澄んでいるように感じた。
素直に、清らかだと、そう思った。

「そのように衣を水にさらしたままでは、風邪を召されますよ?」

「あぁ、これはね。このままでいいのだよ」

「はぁ、そうなのですか?」

「そうなのだよ」

いつものように、極上の笑みで、答えたのだが。
彼は、不思議そうに首をかしげただけだった。
おや、と私も心中で首をかしげた。
いつもならば、どんな会話をしていようとも、私が微笑めば、相手は私になびくのに、彼にはそんな気配が一切感じられなかった。

「君は、何をしているの?」

彼のそんな様子が、何だか物珍しくて。
それこそ、自分にしては珍しく、相手に興味がわいて、尋ねてみた。
彼は、疑うことを知らないような瞳で、にこりと微笑んだ。

「私は、母に頼まれた薬草を採りに」

「そう、君は孝行者なのだね」

そんなことはありませんと、困ったように照れるさまが、見た目よりも幼く見えて、何だか可愛らしいと思った。

「あなたは、何を? いつもここでそうしておられますね」

「前から、私を知っていたの?」

「あ、その、すみません。あなたは華があるというか、つい目を引かれてしまいまして」

「声をかけてくれればよかったのに」

微笑みそういうと、真っ赤になって。

「とんでもありません。今だって、ものすごく勇気が要ったのに」

「そのなのかい?」

声を漏らして笑うと、彼も肩の力を抜いて、小さく微笑んだ。
さやさやと、葉擦れが心地よい。
今まで、漠然と過ごしていた時間。
それと同じであるはずなのに、どうしてだか今は妙に穏やかに感じた。

一陣の、強い風が吹き抜け、あたたかな日差しを翳らせた。

彼は、一瞬、考え込んで。
そして意を決したように声を出した。

「あの、肌寒くなってまいりました。やはりそのままでは体調を崩しかねません。もしよろしければ、私の家に。着替えを」

「君の家に?」

「すみません、差し出がましいですよね」

「いいや、お言葉に甘えよう」

魔が差した。
そうとしか思えなかったが、心の中は凪いでいた。
では、と差し伸べる彼の手を取り。
するり、と自ら沢から腕と衣を抜く。
誘われるまま、彼について沢を離れる。

いつもならば、逆の行動。

なのに違和感は感じなかった。
それは、さも当然のことのように。
道をくだり、彼の住処へと。
雫を滴らせていた衣は、次第に水気を失い。
露をまとっていた髪は、枯れ草の音を立てた。

「ねぇ、君に触れてもいい?」

「え?」

私の声に振り返った彼に、腕を伸ばした。
けれど、それは果たせず。
乾いた音を立てて、私の指は砕け散った。

「あぁ、そうだった」

私のその声は、音になったのだろうか。
視界の中、彼の穏やかな瞳が見開かれたのが、最後に見た風景だった。



忘れていたわけではなかった。
それでも、そうすることが当然だと思っていた。
彼と共に歩みたいと、そう思ってしまった。
それが、己にとって何を意味するのか解っていながら。
彼は、私のさまを見て、どう思ったのだろうか。
驚愕し、恐怖しただろうか。
それさえも、今はわからない。
けれど、解ったことがひとつだけ。

これが自らを省みることもできないほど、ヒトをいとおしむという気持ちだということ。

会って間もなく、お互いのことも何も知らず、まして名も知らない彼。
それでも、惹きつけられてしまった。
長い間、理由もなく、ただ生きてきた。
生きるための本能だけで、これまでやってきた。
その中で、最初で最後の。
恋というものに、落ちてしまった。


END

***** あとがき。*****************************************

タイトルの通り、彼は例の水妖。(笑)
救われないのは、遙か2だけじゃなかったようです。
実はコレ、書いてる途中にフリーズして一回飛んでるので、微妙に書き出しの友雅氏の描写が違うような気がします。
ような気がする、というだけで実際どう違ったのかは思えてな・・・。(汗)

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