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徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。
二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。
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創作の小話です。
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。

遙かなる時空の中で2、翡翠×幸鷹でED後の伊予です。
全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)

【 色褪せた秋桜 】


色褪せた花の風情、とはよく言ったものだ。
本来ならば、まったくの逆の風情だが、もとを知っているだけに、今の彼は、私から見れば、やはり萎れた花だろう。

「翡翠、あれは?」

「あまり乗り出すと、海に落ちるよ」

「そんなヘマはしない・・・、わっ」

「ほら、言わないことじゃない。君はもう大きいのだから、こうやって手を貸すのも一仕事なのだよ」

船縁から落ちそうになった彼の腹を掬い、船底へ座らせて、自分もその向かいに座る。
口唇を尖らせてこちらを睨むその視線は、まさに子供の拗ねた顔。
乱れた髪を後ろに梳きやって、やれやれと溜め息を漏らすと、睨みつけていた視線が、不安そうに見上げてきた。

「すまない・・・。気を、つける」

捨てられる寸前の子供のように、小袿の裾を掴んでこちらを伺う彼の頭を軽く撫でてやり。
その手をそのまま肩に回し、今度は船から落ちないように。
視線の行方を合わせ、聞かれたものに答えてやる。
あらかた聞き終えたのか、言葉が途切れるたびに、彼の視線を頬に感じる。
空を眺めていた視線を、彼の琥珀の瞳に合わせると、頼りなげな視線とかち合う。
袿を握っていた手は、中着を握っていて。

「どうしたの」

「翡翠、私はわがままか?」

「さて、どうだと思う?」

問いに問いを返すと、宝石の瞳が揺らめいて、海に映る太陽のように瞼という波に飲まれた。
しばらく、遠い潮騒と、船縁に散る飛沫の音だけの沈黙が訪れる。
中着から、するりと指が外れるのを逃さず、逆に握りこみ。
俯いた顎を救い上げ、口唇に触れる。
瞳が見開かれ、頬から耳へ、朱が上る。

「・・・ん、ぅ・・・」

歯列を舐めて、舌を絡めて、押し倒しても。
あらがいなどせず、されるがままで。
たぷり、とすぐ耳元に板にぶつかる潮の音。
は、と乱れた吐息がこぼれる。

「わがままは言わない。何でもする、から」

髪の隙間からこぼれる陽の光をはじいて、濡れた瞳が揺れる。
かすれた音が、吐息の声を紡ぐ。

「捨てないで」

彼は恐れている、捨てられるということを。
私の下に来る前に、彼は、朝廷から捨てられ、家からも捨てられた。
彼の家には、すでに彼を守ってくれる人はいなくなっていた。
今まで、媚び諂うように取り巻いていたものたちも、心の底から敬愛していたものたちからも。
彼は見限られ、捨てられた。

そして、私の元へと流れ着いた。

この、物忘れの病によって。

泰継殿は、呪いの崩壊が契機になったのだろうといってた。
無理やり作り上げてきた記憶が、崩壊し、均衡を崩し、その均衡を取り戻すべく、作り上げられたはじめの部分にまで遡って、すべてが消えてしまったのだろうと。
その証拠とでも言うのか、彼はまさに、神子殿がこの世界に来たときと同じような状況だった。
半端に物を知っていて、話すには困らないが生活には困る、といった。
そんな人物が、別当どころか、役職になどつけるはずもなく。
もてあました朝廷は、静養と言う名の永久の流刑に処したのだ。
そうして、京にいるわけにも行かず、紫姫の計らいで私の元へやってきた。
はじめは、面倒だと思っていた。
だが、子供のような彼も面白いかなと、付き合っていたのだが。
やはり、元の彼を知っているだけに、新鮮さは余計に差異を際立たせて。
形だけは残り、色が抜けてしまった写し絵のように、味気ない。

「ひすい」

「切ないね」

そう言っても、窘めの声は返ってこない。
肩を抱いても、払いのける腕はない。
口唇に触れても、もっと奥を探っても、拳は飛んではこない。
それはまさに、萎れた花を愛でるよう。
触れればはじく、瑞々しい茎も花弁もなく、されるがまま。

そう、まるでそれは、色褪せた秋桜。

遠く、潮騒が。
心に爪を立てるように、「幸鷹」という名の彼を組み敷く私の、頭の後ろでさざめいていた。


END

***** あとがき。*****************************************

よくあるパターン、記憶喪失ネタ。
遙か2はいろいろネタ思いつくけど、救われないものが多すぎなのはどうしてだろう・・・。(汗)

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