徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。 二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。 |
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。
遙かなる時空の中で2、翡翠×幸鷹で現代編です。
全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)
【 禁煙しましょう 2 】
キーの弾かれる音と、廃熱ファンの音だけの部屋に乾いたノックが響く。
返事ははじめから期待していなかったようで、ノックの主は了承も得ぬまま扉を開いた。
「幸鷹」
「何だ」
こちらも、了承を得ず入ってくるのは予め解っていたようで、ディスプレイから目を離さぬまま、返事だけよこした。
少し煙った部屋に、ディスプレイの光を受けて、幸鷹の輪郭がぼんやりと浮かび上がる。
そのさまに、翡翠は顔を顰めた。
「少し、度が過ぎるのではないかな」
「集中力があるときに、やってしまいたいのですよ」
「そうじゃない」
急に間近で聞こえた声に驚き、幸鷹がデスクチェアを回転させて振り返ると、真後ろに翡翠は立っていた。
その顔は、不機嫌さを隠そうともしていない。
あまり不快感を顔に出さない翡翠だけに、幸鷹は困惑して、言葉に困った。
翡翠は無言で幸鷹の手を取り、その指に挟まれている、彼にはあまりにも不似合いなそれを取り上げ、それを自分の口に運んだ。
「いくらなんでも、吸いすぎだ。自重したまえ」
一度吸い込み、白くなった煙を吐き出して、翡翠はそれを灰皿で、少し苦労してもみ消した。
灰皿は、あふれるかあふれないかのギリギリのラインを保っている。
幸鷹は翡翠の言葉とその灰皿の様子に、ばつが悪そうな顔をした。
「自分に非があることは解っているのだね」
その翡翠の言葉に、さらに窮して幸鷹は眉根を寄せ、控えめに翡翠を見上げた。
正直、翡翠はその視線にぐっと来るものを感じた。
けれど、ここでその視線に屈するわけには行かない。
翡翠自身も、自分も嗜み程度に口にするものだけに、あまり口煩くは言いたくないのだけれど、幸鷹のそれは目に余るものがある。
「そんなかわいい顔をしても、駄目だよ」
「・・・好んでいるわけではないのです。その、気がついたら・・・」
翡翠の言葉に、一瞬、柳眉を吊り上げそうになった幸鷹だったが、ここで激しては延々果てのない言い争いになってしまうと言葉を呑み、小さく嘆息して言葉を漏らした。
視線を落とし、そして無意識に、指先で口元に触れる。
白い指が、薄赤い唇と、半開きのその中のさらに濃い色を際立たせる。
「気がついたら、ね・・・」
「・・・翡翠? ・・・っ?!」
含みのあるような翡翠の声を訝しく思い、視線を上げると、さらに引き上げるように顎を掬われた。
驚きに、声を上げようとした口唇は、言葉を紡ぐことなく翡翠によってふさがれた。
逃れようと足掻いてみても、顎を掬われたことによって腰が浮いた中腰の不安定な状態では効果はなく。
逆に、膝が笑ってしまって体を支えられなくなって、翡翠に縋りつく形になってしまう。
くぐもった鼻に抜ける声が、翡翠の鼓膜を心地よく打つ。
顔にかかる絹糸のような髪を、梳くように耳の後ろに流したならば、幸鷹は小さく体を撓らせて、翡翠に塞がれながらもさらに妙なる声を紡ぎ、縋る指に力を強めた。
頬に触れる睫と声とともに鼻から抜ける次第に熱くなる呼気が、欲を刺激して、翡翠の背筋に甘い痺れを走らせる。
幸鷹の口端から、飲みきれなかった唾液があふれて、顎へ伝うのを追いかけるように唇をずらすと、一塊の大きな熱のこもった湿った吐息が幸鷹の唇から吐き出され、そのまま膝が砕けた。
自分の胸に凭れる幸鷹のぬくもりに気をよくしながら、翡翠は幸鷹の背を軽く撫ぜ、再びデスクチェアへとその体を戻した。
俯いた幸鷹の表情は見て取れなかったが、真っ赤になっているのは俯いたことによって晒された項の赤さを見れば一目瞭然だった。
翡翠は自分の唇の効果を悟って、幸鷹に気づかれないように微笑んだ。
その後、雪崩込むように致されてしまった幸鷹は、自己嫌悪に震えながら、シーツに包まりベッドの端で丸まっていた。
翡翠はそのさまを満足げに眺めながら。
「口寂しいというのなら、いつでも私がその寂しさを埋めてあげるから。煙草は控えたまえ、可愛い人」
「・・・結構です!」
優しげに、慈しむように告げられた、その言葉に、そんなことをされたら、作業どころではなくなると、幸鷹はその辺りにあった本を投げつけて翡翠を部屋から追い出した。
その後、幸鷹のデスクには煙草ではなく、飴を詰め込んだ瓶が据え置かれるようになった。
END
***** あとがき。*****************************************
私の中では幸ちゃんは作業しているときだけヘビースモーカーなイメージ。
普段はまったく吸わないのに、PCの前に座るときだけ・・・、という感じ。
ホントは『口寂しいのなら~』の行が書きたかっただけなんですが。
どうしてこんなにキス描写が長いのか。(汗)
漫画にしたら、軽く4ページくらいずっとキスしてそうだな、この二人。(ぇ)