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徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。
二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。
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創作の小話です。
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。

遙かなる時空の中で-舞一夜-、季史→友雅で過去編です。
全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)


(遙か花街再録)

【 霧雨 】


「風邪をひきますよ、多殿」

声をかけられて、雨が降っていることに気付いた。
いつから降っていたものか、私は全身濡れ鼠になっている。
また私は、時を忘れ、雨にも気付かず舞に没頭していたようだ。

「何かに夢中になれるというのは、素晴らしい事ですが、それで儚くなってしまっては、元も子もありますまい」

『おいで』と、差し伸べられた手に、私は引き寄せられるようにその手を取っていた。
その手は、ひんやりとした雨の温度だった。



手を引かれるまま、彼の邸までつれて来られて、ようようにして、私は事態を把握し始める。
その頃には、塗れた衣は室の隅に吊るされ、私は侍従の香をまとう狩衣を着ていた。

「・・・あ、」

今は何時だろうか。
私はどれほど舞っていたのだろうか。
楽所の者に何も伝えていなかった、と視線を邸の主に向ければ、当然のように彼は笑った。

「楽所の方には使いを出しましたよ。いくらなんでも、この雨の中そのままお返しするわけには参りますまい」

「・・・すまない」

彼は面白そうに私を見、いつ遣したのか杯を傾けていた。
所在無く、己の膝をとうとうと眺めていると、雨の音がいや増して耳につく。
外は、にわかに大降りの様相を呈していた。
それなのに、耳は彼の衣擦れを拾い上げる。
さらりと乾いた音が、雨の濡れた音の中で際立つ。

「あなたは、子供のような方ですね」

衣擦れが近づいて、深みのある声が耳朶を打った。
視線を上げれば、杯が差し出されている。
渡されるがまま、手に取れば、なみなみと酒を注がれた。
揺れる水面に引き寄せられるように口をつけ、喉を焼く熱に眉を寄せ、私は杯を置いた。
腑にたまった酒が、じんわりと体に熱を回す。
その熱に浮かされたように、私は問うていた。

「それは、どういう意味だろうか」

「そのままの意味ですよ。純粋で、己の求めるものに迷いがない」

視線を雨に投げ、彼は杯を傾ける。
ひんやりとしたあの指で、熱い液体を流し込む。
あの指は器用で、琵琶で妙なる音をつむぎだす。
どこか悲しく、虚ろな響きを。
何かを求めるように、彷徨うように。

「あなたは、何を求めているのだろうか」

「さて・・・。求めることを求めているのかもしれませんね」

眩しいものでも見るように、瞳が眇められる。
彼が眺めるものの先を知りたくて、同じように私も庭に視線を向けるが、その先は滲んだように朧で定かでない。
それは、求めるものを探せぬ暗澹たる心情ゆえか、霧雨ゆえか。
いつしか雨音は消え去っていた。

「ああ、小降りになってきましたね。邸まで送らせましょう」

話はこれまでとでもいうように、彼は扇を翻した。
幽かに、床を踏む音が遠くに聞こえる。



「いつか」

「うん?」

「いえ・・・。・・・世話になりました」

別れ際、あの琵琶をもう一度聴きたいと、言おうとして止めた。
あの琵琶の音色は、何を求めていたのか。
彼が何を求め、あの音を奏でるのか。
美しい音色であるにもかかわらず、さらにその先の何を求めているのか。
その答えの一端に少しでも触れてから、琵琶を聴きたいと思った。
私の中で霞み降る霧雨が晴れてから、――と。


――了――


どういうわけか、季→友。
というか、出て来てるのが誰なのかイマイチはっきりしないというか・・・。
この二人を描くと、文章ではこういう感じになってしまいます。
季史視点なのがマズイのか。
いや、まぁ、好きなカプではありますが、報われないことこの上ない。
どうにも私は、この手の犬っころキャラに弱いみたいなんですよねー。
大人なのに妙に頼りないというか。
しかし、敬語の友雅殿は扱いづらい。

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