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徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。
二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。
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創作の小話です。
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。

遙かなる時空の中で2、翡翠×幸鷹で伊予編です。
全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)
【 泡沫 】


伊予で抱かれたのは、一度だけだった。





理解できない。
あの男が何を考えているのか。
飄々と、風に身を任せる鳶のように。
けれど、決してすべてを委ねると言う事は無く。
瀬戸内の風のような男。
この男に、惹かれてはならない。
この男に、魅せられてはならない。
この男に、捕らえられてはならない。
そんな警鐘が、彼と出会ってすぐに私の中で鳴り響いた。
だがそれは、すでに手遅れだ。
警鐘は、事がすでに起こってから鳴るものだ。
そう思った瞬間に、すでに私の心は翡翠に浚われていたのだ。

波に浚われるよう、幾度と無く体を重ねられたが。
本当の意味で、身を沈められたのは一度だけ。
あとはそう。
ただ、私を悦ばせるだけに、翡翠は夜を費やした。
それに、如何程の意味があるのか、私には解らず。
だが彼は、楽しそうに私を誘う。
若い私はそれに抗う術を知り得ず。
波に浚われるよう、快楽の海に溺れた。
そして、彼は私に様々な恥辱を与えながらも、口付けは与えなかった。
いや、夢現に、彼の唇を感じたことはあったが、現では決して。

お前の望みは、いったい何だ。
解らない。
それが、よりいっそう、私を苛つかせる。
すべてを受け入れるように微笑を絶やさず。
それに反して、すべてを拒絶する瞳。
期待は抱かず、諦念を抱いた心。
その時々、良きように過ごせればそれで良いと、刹那主義で。
なのにそんな翡翠が、何か求めているような気がした。
何、とは解らない。
けれど確かに何かを求めているように。
そして、焦がれるように求めていることを、本人も知らず隠している。
その隠れ蓑が、あの薄い笑顔。
私を弄ぶ事で、お前のその餓えは充たされるのだろうか。
それならばどうして、自分の快楽を追おうとしないのか。
何もかもが解らない。
それが苛つきと、そして悔しさを伴う。





「久しぶりだね、国守殿。いや、別当殿だったね」

「よくも抜け抜けと私の前に現れたな」

「うん、せっかく京に来ているのだし、楽しまねばね」

「この・・・っ!」

「また、遊ぶのはどうだい? 別当殿。・・・ではね」

あの頃、伊予で出会った頃と変わらぬ微笑み、変わらぬ物腰。
それなのに、掠めるように、掬い上げられた唇。
意味有り気に細められた瞳。
一瞬、目の前に広がる髪のうねりで垣間見えた瀬戸の海。
香った潮に混じる独特な侍従。
またも浚われた私の心。
いや、私は伊予に赴いたときからずっと、彼に心を浚われ捉えられているのだろう。





翡翠、お前が解らない。
私の体を求めているのならば、何故奪わないのか。
いっそ、奪い尽くされたほうが、まだ得心も行くというのに。
翡翠、・・・お前が解らない。





伊予で抱かれたのは、一度だけだった。



END

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