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徒然のんべんだらり、気の向くまま萌の赴くまま。
二次創作BL中心、腐女子バンザイ乱行三昧。
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創作の小話です。
BL要素のあるものなのでお嫌いな方は、閲覧をご遠慮くださいますよう、お願い致します。

遙かなる時空の中で4、風早×柊です。
風早の天然が炸裂してます、そして柊がありえないくらいオトメです。

全年齢対象だとは思いますが・・・。
(BLの時点で全年齢対象・一般向けではないような気がしないでもないですが)

【 残照 】

知ってました? 貴方は照れると無口になるんですよ。

 
無駄によく回る舌だとか、忍人は彼をそう評する。
まぁ、確かに回りくどい言い方が多いから、口数が増えてしまうのも頷けるかな。
あの話し方のせいで、姫も時々頭を悩ませているから、もう少し解りやすい話し方をすればいいのに、とは常々思っているのだけれど。
けれど柊は、決して嘘は言わない。
嘘をつくことで、歪みが生ずることを彼はよく知っている。
だから嘘はつかないけど、黙ることはある。
伝えたくない真実を隠すための、無器用な沈黙。

けれど、もう1つ、彼は黙る時がある。
不器用な、彼らしい沈黙。



「何か用ですか?」

姫の部屋にこの辺りの地理のことを記した竹簡を置いた帰り、夕闇の差し迫った楼台で柊を見つけた。
いつも、書庫に篭ってばかりいる彼には珍しいことだ。
山の端に沈む夕日が、この日最後の輝きを空に放っている。
解けてゆきそうな茜色を受けて、柊の長い髪も金色に透けている。
その様があんまり綺麗で、ぼんやりと楼台の入り口に立っていたら、柊に声をかけられた。

「いえ、別に用はないんですが」

「おかしな男ですね。用もないのにそんなところで突っ立っているんですか。君も大概暇な男ですね」

どうやら俺は、ずいぶんと長く柊に見とれていたらしい。
大げさに肩を竦められて、何だか居心地が悪くなる。

「いや、綺麗だなって思って」

居心地の悪さを誤魔化すように、素直に思ったことを口に出せば、柊は視線を俺から夕日に移す。
そして眩しげに目を細めた。

「何事も、潰える前の一瞬こそ美しいもの。迴光反照とはよく言ったものですが、しかしながら太陽も月も星も、それを幾度となく繰り返す。・・・君はどう思います?」

「・・・終わる寸前だけが綺麗なわけではないでしょう。太陽も月も星も、中天にある時だって綺麗だ」

「上出来です。君はそうやって、繰り返す世界を眺めればいい」

瞳を閉じたまま、柊は口元だけに笑みを浮かべる。
柊が言わんとしている事はおおよそ見当がつく。
けれど俺は、見定める側として、それを肯定してしまってはいけない。
彼のおかげで、俺もずいぶんととぼけるのが上手くなった。

「何のことだか、よく解らないけど。俺は本当に綺麗だと思ったんですよ」

「そうですね」

「夕日を浴びる貴方が」

「・・・っ・・・」

いったん言葉を切ると、柊はほんの少し、吐息だけで笑った。
けれど、続く俺の言葉に息を呑むように動きを止めた。
碧い隻眼が瞠目し、そして訝しげに眇められた。

「何かおかしなものでも食べたんですか?」

「いやだなぁ、人を勝手に病気にしないで下さい」

「そうですね。君がおかしいのはいつものことでした」

「心外だな。本当に綺麗だと思ったから、そう言ったのに」

「・・・・・・」

珍しく口上を述べず、頭痛を堪えるようにこめかみを押さえる柊に構わず、夕日に染まる髪に手を伸ばす。
クセの強い髪は、その見た目に反して酷く柔らかく、指の隙間から零れ落ちる。
絹糸のような髪は、陽光を弾き蜜色に輝いて、何だか美味しそうに見えて、つい唇を寄せた。

「・・・何をしているのです」

「え? いや、何となく美味しそうだなって」

「・・・っ」

もう一度、髪を掬い取って口唇を寄せようとしたら、その髪はするりと逃げて、行き場を失った手は高い音とともに弾かれた。
柊の行動に驚いて、ぼんやりと弾かれた手を見やっていると、柊はくるりと俺に背を向け軽く頭を振った。

「・・・相手を間違っていますよ。そういうことは我が君相手におやりなさい」

「えぇ? でも柊が綺麗だからって姫に触れるのは違いませんか?」

思ったままを口に出せば、柊は俺に背を向けたまま酷くうなだれた。
俺は何か間違ったことを言っただろうか。

「そういうことを言っているのではなくて・・・。あぁ、もう、勝手になさい」

ちらりとこちらを見やって、そして柊は諦めたようにまた背を向けた。
俺は間違ったことを言ったつもりもやったつもりもないのだけど、柊にとっては何かが間違っていたらしい。
結構長く人に混じって歳月を重ねているけれど、やはりまだヒトの心の機微というのは図りかねる。
解らない事は経験して知っていくしかないけれど、今はまだ解らないままで。
どうしようか困った挙句、勝手にしろという柊の言葉に甘えることにして、彼の髪に再び手を伸ばした。

「・・・・・・」

今度はもう、何を言う気もないらしく、柊は俺のするに任せてくれる。
けれど、後ろから少しだけ垣間見える柊の左頬が、ほんの少し赤く染まっていた。
夕日に照らされた赤とは、明らかに違う赤で。
いつもはありえないほどの沈黙、そして向けられた背。
そのことは彼が照れていることを表していて、俺は何となく嬉しくなる。
手にした柊の髪は指通りがよく手に心地よくて、何度も掬っては梳いたりを繰り返す。
夕日が頼りない残照を残して、夜を招き入れ始めるまで、俺は飽きずにそれを繰り返していた。
結局あのあとから黙ったままだった柊は、だんまりのままだった。
ひんやりとした風が二人の間をすり抜ける頃。

「・・・俺、柊の髪、好きですよ」

ぽつりとそうもらせば、柊がいつもの少し大袈裟な身振りでため息をついた。

「・・・君は恥ずかしげもなく」

「恥ずかしがる理由なんてないですよ。綺麗なものは綺麗だし、好きなものは好きなんだから」

「全く、君には敵いませんね」

やれやれといった風情で、柊は俺の方に向き直る。
ヒトっていうのは難しい。
どうして思っていることを素直に口にするのを恥ずかしがるのか。
俺にとって、言いたいことを言えないほうが気持ち悪いと思うのだけれど。
それも、もっとヒトと交われば、解るようになるのかな。
それでも、解らない俺なりに解ったこともある。

「そうですか? でも、照れた柊は可愛くて、俺は好きですよ」

「私がいつ・・・」

そう、以前からもしかしてと思っていたけれど、柊は照れると黙る。
不器用な彼なりの、照れる姿を見せたくないという精一杯の強がり。
普段は飄々と押し隠しているその姿を見れたことに嬉しくなって、いつ口を滑らせてしまう。

「知ってました? 貴方は照れると無口になるんですよ」

俺の言葉に毛を逆立てた猫のようになった柊を残して、俺は楼台を逃げ出した。

 

― 終 ―

***** あとがき。*****************************************

あれ? 何か書き始めと路線が変わってしまったような。(汗)
喘いでんのかしゃべってんのか解らない柊が大好きです。
息多いよな、あの人の囁き。<すでにしゃべってる認識なし

天然常春男に翻弄される柊が好きみたいです、私。
いつもどこか諦念抱いて飄々としている柊を、乱したい。

しかしこの二人の会話は難しい。
たくさんの運命を見て来た風早と、既定伝承として、星の一族として運命を識っている柊の会話って・・・。
もっと軽いノリの、おバカな話が書きたいなー。
シリアスだとどうしても、この二人は刹那さ満載になってしまう。

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